女神
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371:名無しNIPPER[saga]
2016/09/27(火) 00:13:19.39 ID:JF3eK7aYo

『・・・・・・やっぱりね』

『え?』

『あんたは、あたしのためとか言ってたけど、実は自分なりに目的があったわけね』

『・・・・・・・いや、そうじゃないって』

『おかしいと思った。あんたがあたしのためだけに、つうか唯のためだけにここまで危な
い橋を渡る理由はないしね』

『俺は唯の幼馴染だし』

『ようやく唯のことをあきらめてほかに好きな女ができたんだ。あんた、有希ちゃんのこ
とが好きなのね』

『ちょっと待てよ。それは誤解だって』

『まあいい。この行動にはお互いに、違った理由があることはよくわかったよ。だけど
さ』

『何だよ』

『このことで遠山さんと池山君ができちゃうかもよ』



 会長は私が偶然に聞いた副会長と夕也の会話の内容を知ると再び考えこんでしまった。

「広橋君は君と、その」

「付き合ってません。前に会長に告白されたとき、会長はそう思っていたようですけど、
それは本当は誤解なんです」

「だって、あの時君は」

 言いかけて先輩は言葉を切った。今さらそんなことを蒸し返してもしかたないと思った
のだろう。特に、今では会長は私ではなく麻衣ちゃんのことが好きになったのだから。

「唯さんを傷つけた優への復讐とか、自分から君を奪っていった池山君への復讐とか、ど
っちの可能性もあるなあ」

 先輩があっさりと話をまとめた。そうだ。ひょっとしたらこれは単純な話なのかもしれ
ない。仮に。仮にだけど、夕也が私のことを好きで、でも私の麻人への気持ちに気がつい
ていたとしたら、そういうことは十分にあり得る。また、副会長が自分の妹のことが大事
で、その妹を振った会長のことを嫌い、そして復讐の機会を伺っていたのだとしても、そ
のストーリーは十分に成立する。やはり、先輩を味方にして正解だったのかも。私はそう
思ったけど、一方で、この人が本当に真実を話している保証はない。二見さんの女神行為
への情報を一番知っていたのがこの人だからだ。麻衣ちゃんから情報を得たのだろうけど。


「とりあえずもう少し落ち着いて考えてみるよ。今日のところはこの辺にしておこう」

 会長が言った。

「わかりました・・・・・・私は生徒会室に戻りますね」

「僕は部室に麻衣を待たしてるんで今日はこれで失礼するよ」

「はい。あ、先輩?」

「うん」

「明日、副会長が出てきたらどうしたらいいでしょう? 直接聞いてみても大丈夫でしょ
うか」

 会長が首を振った。

「いや。まるで見通しも立っていない中でやみくもに問い詰めたって答えてくれる訳がな
い。むしろ警戒されるのが落ちだ。しばらく何も知らない振りをしていよう」

「はい」

 やはり会長の判断力は優れているなと私は考えた。さすがの先輩も真相に至る端著に取
り付けたとはいえないけど、今どう行動すべきかという質問には即座に回答が帰ってきた。
私は妙な安心感に包まれていくのを感じた。もう一人でこの謎に立ち向かわなくてもいい
のだ。

「それじゃまた明日」

 先輩は屋上から去って行った。麻衣ちゃんの待つ部室に向ったのだろう。

 そこまで今日の出来事を回想したあと、私はもう思い返すことをやめてベッドに横にな
った。もう既に日付は変わってしまっていた。


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