369:名無しNIPPER[saga]
2016/09/27(火) 00:11:43.96 ID:JF3eK7aYo
私のそういう思考は表情に出てしまったようだった。いきなり警戒するような表情にな
ってしまった私に会長は苦笑した。
「いや、確かにあの時は相当堪えたけど。さっきも話したように今は優への未練も憎しみ
も本当にないんだ。自分でも不思議なくらいにね。多分、いや間違いなくそれは麻衣のお
かげなんだけど」
会長は私の視線を忘れたのか、そこで麻衣ちゃんを思い浮かべているのか幸せそうな表
情を浮かべた。その表情を半ば飽きれ気味に見ている私の視線に気がついた先輩は顔を赤
くして話を続けた。
「それはともかく。その時優のいない二年生の教室で、僕が優が東北に引っ越したことを
聞いたのは、唯さんからなんだ」
「その時の僕はショックを受けていたから、その時の唯さんの表情とか感情を観察するよ
うな余裕は無かった。でも、今にして考えてみると」
会長は思い詰めたように言った。
「二重の意味で唯さんにはショックだったと思うよ。一つは彼女の純粋な僕への気持ちを
僕が断ったのは優が好きだったからだけど、その優が僕に何も知らせずにあっさりと僕を
捨てて黙って転校して行ったこと。つまり、唯さんが本当に僕のことを一時の気まぐれで
なくて愛していたのだとしたら、そんな僕が心を奪われていた優があっさりと僕を振った
ことはいろいろな意味でショックだったろうな」
「先輩は唯さんが先輩を本当に好きだったと思っているんですね」
あたしは少しだけ意地悪に聞いた。女性関係に自信がない会長にしては随分思い切って
断言していたから。
「さっき祐子さんに唯さんが僕に会いたいと言っていたと聞いたときにそう思ったんだ」
先輩はそんな私のことを気にした様子もなく続けた。
「そしてそんな彼女が女神行為をしている優のことを知ったら。彼女が何かをしでかした
としても不思議ではないし」
「それからもう一つは、多分当時の僕は僕のことを気にして慰めてくれた唯さんのことを
まるっきり無視するよう態度を取ったんだと思う。記憶にはないけど、僕は優が黙って転
校していってしまったことにショックを受けて周囲を気にする余裕なんかなかったはずだし」
先輩は必死に当時の光景を思い出そうとしているようだった。
「じゃあ、先輩は唯さんが二見さんを落とし入れた犯人だと言うんですか」
「・・・・・・それはわからない。そんな単純なことでもないかもしれないね。それに唯さんは
優に会いたいとも言っていたらしいし」
「・・・・・・それじゃ何にもわかっていないのと同じですよね」
私はついきついことを口にしていた。
「まあ、そうだ。でも、僕にとっては最終的に優のことを追い詰めたのは僕じゃないこと
を証明したい。それで麻衣に許してもらえるかはわからないけど、それでも事実が知りた
いんだ。本当のターゲットはいったい誰なのか」
私はさっきから会長を問い詰めるような質問をしていたけど、やはり謎を解くには会長
の分析能力が必要なのではないかと考え出していた。
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