女神
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359:名無しNIPPER[saga]
2016/09/05(月) 22:45:26.85 ID:WlGCXGIKo

「麻衣・・・・・・さんにはまだ話していないよ。そして今の僕にとって一番大切なのは二見さ
んでも唯さんでもなく麻衣さんだけど、だからと言ってそういうフォローを君に頼もうと
したのでもないよ」

 会長は私の内心を見透かしたように言った。

「むしろ、迷惑かもしれないけど僕のしでかしたことを聞いて欲しいんだ。今の今まで誰
にも黙っていようと思っていたけど、唯さんまで出てくると何かいろいろ不安になってき
たよ」

「意味がわかりません。もっとはっきり話してもらえますか」

「僕の恋愛関係のことを相談したいわけじゃないんだ。僕のしたことで麻衣さんに振られ
てもそれは事業自得だから」

 今や会長の顔は真っ青だった。でも言葉の勢いは前よりも激しさを増しているようだっ
た。

「今までは全然気がつかなかったんだ。僕の愚かな行動で池山君と二見さんを破滅させた
んだと思っていた。でも、それより僕の知らないところでもっと何かが起こっているみた
いだから」

 私は再び凍りついた。今まで、会長の個人的な複雑な悩みを聞かされているだけのつも
りだった。でも会長が言うには私が真相を突き止めようと決めた、麻人と二見さんを襲っ
た出来事について言及したのだった。

「聞いてくれるか?」

 きっと私の顔色が変ったことに気がついたのだろう。会長は興奮を鎮めるようにそっと
続けた。



 帰宅してベッドの中で寝る前に、私はさっき屋上で会長から聞かされた話を思い返した。

 生徒会長の話は私に麻人と二見さんを巡って起きている出来事に対する、新たなそして
かなりの量の情報をもたらしてくれた。ただ、その話は断片的で、二見さんを陥れた本当
の原因を明らかにしてくれたわけではなかった。新たに増えた事実は、私が明らかにした
いと思っている真実から更に遠ざけてしまったようだった。

 私はベッドの上で身体を起こした。このまま考え事をしていたら明日の授業はひどい有
様になりそうだけど、こういう状態になると眠ろうとしても眠れないことは自分でもよく
わかっていた。

 寝ることをきっぱり諦めた私は最初から会長の話を思い起こすことにした。会長は昨日
真っ青になりながらこう言ったのだった。

「・・・・・・君たちの担任の鈴木先生に、優の女神行為を知らせたのは僕だ」

 私はこれまで犯人を想像しようと無駄な努力を繰り返していた。二見さんに横恋慕した
校内の男子生徒とか、麻人のことを思い詰めるほど好きになってしまい、二見さんを逆恨
みしたった女の子とか。そして、最近になって有力な犯人候補として考えざるを得なくな
ったのが、夕と副会長だった。でも、まさか生徒会長が犯人だとは思いもしなかったのだ
った。

 その話はそれだけでは終らなかった。

「僕が二見さんと池山君に酷いことをしたという自覚はある。でも、ここまで二人を追い
詰めたのは僕じゃないんだ。それだけは信じて欲しい」


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