351:名無しNIPPER[saga]
2016/08/18(木) 22:41:27.82 ID:IwnlMYSho
私と祐子ちゃんは周囲を憤っている先輩たちに囲まれてだんだんと萎縮してしまった。
それでもスケジュールを修正しなければいけないことには変りはなかった。各部が独力で
部室や教室で実施するイベントならば好きに構成を組めばいいけど、野外のステージや学
校のメインホールでのイベントのような、実行委員会が運営するイベントに参加するサー
クルには、こちらの指示に従ってもらうしかない。イベントの裏方を務めるのが彼らでは
なく実行委員である以上、割ける人的資源は有限である。どんなに責められてもそこは譲
れなかった。
もっとも、譲れない事情は先輩たちにとっても同じようで先輩たちは厳しく生徒会の不
備を突いて当初どおりの時間を割り振るよう要求した。私の背後に隠れてしまった祐子ち
ゃんに代わって、先輩たちに対峙した私は一歩も譲らず時間の削減を要求するしかなかっ
た。そうしないと学園祭のイベント自体が成り立たない。ここで譲歩するという選択肢は
なかった。それでもやはり三年生の先輩たちの圧力は無視できないほどのものだった。
今日も副会長先輩が不在なため、気の重い真実を問い質すことが出来なくて複雑な想い
を抱いた私だったけど、そういうこととは関りなく、今はこの場に副会長か会長にいて欲
しかった。私と書記の祐子ちゃんにはこの圧力は重過ぎた。
その時、生徒会室のドアが開き、突然生徒会長が姿を現した。
一目でこの場の不穏な様子を理解したのだろうか。生徒会長はやや戸惑ったようにいき
り立っている三年生の部長たちを眺めた。
「君たち、生徒会室で何をしてるんだ?」
生徒会の責任者を見つけた先輩たちは、もう私と祐子ちゃん何かを相手にせず、直接生
徒会長にクレームを付け出した。彼らにとっては会長はタイミングよく現れたいい獲物だ
ったのだ。クレームの内容自体はこれまでと全く同じ内容だった。驚いたことに最近は時
たま現れて指示をしていくだけだった生徒会長は、クレームを聞いているうちに問題の根
本をすぐに把握してしまったようだった。
騒ぎが収まるまでにはかなりの時間を要した。生徒会長は不満を述べる三年生たちの
話を遮ることをせずじっと耳を傾けていた。一瞬、この人はひょっとしたら三年生の先輩た
ちの味方なのだろうかと私が疑うくらいにていねいに。
でも、もどかしいくらいに先輩たちの話を聞き彼らの苦労に共感を示していた先輩は、
やがて淡々と実行委員会の事情を話し始めた。それは私と祐子ちゃんだって今まで必死に
なって先輩たちに訴えていたことと全く同じ話のはずだったけど、会長が一から冷静に状
況説明して行くうちに部長たちの興奮も少しづつ収まっていったようだった。
「会長の言うことはわかるけどよ、何でそんなミスするんだよ。ツケは全部こっちに来る
んだぞ」
「最初から無理のない時間を割り当てろよ」
「劇の台本って、時間を厳密に計ってるんだから、今後は注意してよね」
「各ユニットごとに五分づつ持ち時間を削るしかねえか」
心からは納得していなかったろうけど、先輩たちは各部への割り当て時間の削減が不可
避であることを不承不承了解し、捨て台詞を残して去って行ったのだった。
何とか自体が収まったのは会長のおかげだった。会長は麻衣ちゃんとの交際に夢中にな
って、本来すべき仕事を放棄してその責任を副会長先輩に押しつけていたのだけれど、や
はりこういう修羅場を収めてくれる力を持ってはいたようだ。
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