350:名無しNIPPER[saga]
2016/08/18(木) 22:40:45.34 ID:IwnlMYSho
私が胃を痛めるストレスを宥めながら生徒会室のドアを開けた時だった。何やら祐子ち
ゃんに詰め寄っている先輩たちとそ、れに対して一生懸命説明している彼女の姿が目に入
った。
今日も浅井副会長は生徒会室にいないようだった。でもそのことにほっとする、あるい
はがっかりする余裕はなく、私はいきなり私が部屋に入ってきたのを知って顔を明るくし
た祐子ちゃんに手を引かれた。
「ようやく来てくれた。この人たち言うことを聞いてくれないのよ」
書記の祐子ちゃんを囲んでいたのは音楽系や演劇系のクラブの部長だった。先輩たちは
許可されていた時間を削減されて憤って生徒会に文句を言いに来たらしい。
「おいふざけんなよ。お前らが時間を割り振ったんだろうが。俺たちはそれに従ってプ
ログラム組んだんだぞ。今になって十五分減らせとか何考えてんだよ」
「全部組みなおしになるのよ。台本から書き直しになっちゃうじゃない。ありえないでし
ょ」
これは演劇部の美人で有名な部長だった。
「お前たちから言われた時間をさらに各バンドに割り振ってんだぞ。一週間前に今さら構
成やりなおせとか部員たちに言えるかよ」
「何とかならないかな。これじゃ学園祭の出し物を、どれか中止するしかないのよ」
各部の責任者たちも必死だった。別に生徒会をいじめたいわけではなかっただろう。彼
ら自身が私たちの示した時間を更に区割りして各部員に伝達していたのだろうから、再度
の時間の割り振りによって彼らが部員たちに責められることになるのだ。
私たちのスケジュール修正は、各部に対して思っていたより深刻な影響を与えてしまっ
たようだ。
祐子ちゃんによって、彼女の側に引き寄せられた私は、三年生の部長たちの注目を浴び
てしまったようだった。
「あんたが責任者?」
演劇部の三年生の部長が言った。美人で有名な先輩だったけど、今はその表情はきれい
というより怖いと言ったほうがいい感じだった。
「何でこんなことになったんだよ」
軽音部の派手な容姿の先輩も低い声で続けた。
「去年まではこんなことなかっただろうが」
「何とかしろよ。今さら全部のプログラムを変えろって言うのかよ」
これはヒップホップ系のダンスサークルの部長だった。
私は昨日は気軽に考えていたのだった。今の祐子ちゃんのスケジュールが成り立たない
のは確かだったから、各部の時間を削って各イベントの重複を無くすしかない。そうしな
ければイベントを裏から支える実行委員会のスタッフが足りなくなる。その辺のシミュ
レートが今年の時間割には決定的に不足していた。
私は全体の調整をしていた副会長の下で、主に全体計画の進行管理とか物品調達を担当
していたので、イベントスケジュールがこんな状態になっていたなんて昨日初めて気がついた
のだ。イベントの時間割は副会長の承認を得ていたはずだけど、さすがの副会長もここまで
細かい問題には気がつかず見過ごしてしまっていたようだった。
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