女神
1- 20
338:名無しNIPPER[saga]
2016/08/11(木) 23:50:09.57 ID:VfUpLYzMo

 お互いに沈黙したままで電車は駅を離れたのだけど、その沈黙を気にしているような様
子は麻人にはなかった。むしろ私が黙ってしまったのをいいことに、再び麻人は自分の思
考に閉じこもってしまったようだった。

 いったい麻人は何を考えているのだろう。もちろん大切な自分の彼女である二見さんを
陥れた人物に対する復讐だけを思い詰めているのだろうけど、麻人にはその相手を特定で
きるヒントすら知らないはずだった。

 麻人にはまだ黙っていようと決めた私だったけど、今のようにひたすら復讐心だけを持
て余していて、でも全くその想いを前進させることができないで苦しんでいる麻人の気持
ちを考えると、私の決心も少し鈍ってきた。やはり、どんなに不確かな情報であっても麻
人には私が偶然知ったこの事実を伝えるべきなのだろうか。

 一瞬心が弱った。でも私は辛うじて思いとどまった。とりあえず、少なくとも浅井副会
長に事実関係を問いただそう。せめてそのくらいのことは試みてから麻人に対して話をし
よう。

 結局、麻人は私の初恋の相手だし大切な幼馴染だった。初めて二人きりで登校し出した
あの頃からはだいぶ遠いところまできてしまった私たちだけど、二見さんと付き合いだし
た麻人のことを、それでも大事に想う気持ちだけは変わっていなかった。そして麻衣ちゃ
が麻人を私に託してこの戦線から離脱してしまっている以上、麻人を救えるのは私だけだ
った。

 そういう訳で、夕也の本心すらわからなかったのだけど、私は麻人の味方になることに
腹を決めたのだった。たとえどんなにひどい事実が明らかになっても。私の麻人への恋が
裏切られることになったとしても。

 私と麻人が校門に入って二年生の教室に向っていた時だった。中庭に面した部室棟から
親密に寄り添っている男女が出てきた。それは麻衣ちゃんと生徒会長の石井先輩だった。
私と同時に麻人もその姿に気がついたようだった。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
468Res/896.79 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice