女神
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337:名無しNIPPER[saga]
2016/08/11(木) 23:49:02.23 ID:VfUpLYzMo

 私はとりあえず今日は麻人に連絡するのを止めた。麻人と二見さんが純粋な被害者であ
るらしいことをようやくあたしは理解したのだけれど、それでも今は麻人に対して今日の
出来事を話すのは早いだろう。私はそう思った。夕也と浅井副会長の目的が理解できてい
るわけではないのだから。そしてここまで考えた私は、この先どういう結論が出るにせよ、
このまま麻人に相手にされることはないにせよ、自分がもう夕也と付き合うことはないだ
ろうと確信した。夕也が犯人なら、たとえ私への麻人の態度や二見さんの行動に対して憤
ったその動機だったとしても。

 帰宅して寝るためにベッドに入るまでの自分の行動を思い出せない。普通に家族と接し
たのだろうけど。 ・・・・・・いくら考えても今日はもう何も思いつかなかった。とりあえず
こんな不確定な段階では麻人にこのことを話すわけにいかないことだけは確かだった。

 私がやろう。その時決心した。自分のためか麻人のためかは自分でもわからないけど、
私が真実を突き止めよう。

 翌朝、一晩がたってだいぶ心の整理がついてきた。真実は相変わらずは闇の中だった
けど、自分がすべきことやすべきでないと思われることの仕分けについて、私はだいぶ確信
が持てるようになってきていた。とりあえず真実はまだ何も明らかになっていないのだから、
偶然に知ってしまった夕也と浅井副会長の会話のことを麻人に話すのまだ時期が早い
ことは確かだった。

 私は浅井副会長とは気が合ったしうまくやっていたつもりだったので、昨日は反射的に
浅井先輩と顔を合わせるのを避けてしまったけれど、一晩が経って落ち着いて考えると女
同士の話として副会長がどんな想いでこんなことをしようと思ったのか語り合えるのでは
ないかという気がしてきた。何といっても昨日の会話からは、浅井先輩は少なくとも麻人
のことを敵視しているようには思えなかった。夕也はともかく、少なくとも副会長は。い
ろいろあるけど、私は副会長先輩のことはこれまでお手本にするくらい心酔していたのだった。

 どっちみち副会長先輩とはこの先も一緒に作業をしなければならない。昨日の会話を聞
いてしまった私には浅井副会長に気取られずにこれまでどおり普通の態度を取る自信はな
かった。浅井先輩に率直に話しかけてみよう。私は結局そう決心したのだった。

 今朝に始まったことじゃないけど、こうなるまでは隣の家のドアから出てくる夕也と偶
然会えないかと期待していた私は、今日はこれまで以上に急いで夕也の家を通り過ぎた。
心配するまでなく以前は夕也と待ち合わせしていた時間には、彼は姿を見せなかった。駅
のホームに入ってきた電車の中には昨日と同様に麻人が一人でつり革に掴まっていた。

「おはよ」

 私は無理に明るい声を出すように努めた。今、私が悩みや疑問を抱えていることを、麻
人に感づかれてはまずい。でも彼の方も私の態度なんかを気にする状態ではないようだっ
た。

「有希。おはよう」

 それでも昨日の私の注意を気にしたのか一応、麻人は普通にあいさつをしてくれたけど、
相変わらずその目には以前のような生気は感じられなかった。

「・・・・・・二見さんからメールとかあった?」

 私は遠慮がちに聞いてみた。

「ねえよ」

 麻人はもう激昂することもなく淡々と返事をしてくれた。

「そうか」

 私ももうそれ以上何を言っていいのかわからなかった。

「じゃあ、よかったらお昼休み一緒に過ごそう」

「うん。気を遣ってもらって悪いな」

 麻人はそう言ってくれたけど、その目は相変わらず虚ろなままだった。

 今度こそ私は麻人に対して何といって声をかけていいのかわからなくなってしまい黙り
込んでしまったのだった。


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