329:名無しNIPPER[saga]
2016/07/31(日) 23:42:26.44 ID:rPhbjypgo
麻衣ちゃんが、先輩が部長を務めるパソコン部でいったい何をしたいのか、私には全く
わからなかった。先輩は学園祭間近の生徒会を放り出してまで麻衣ちゃんの面倒をみてい
るようだった。それについては私と一緒に学園祭の準備をしてくれている生徒会の副会長
が、ある時私に吐き捨てるように言った言葉が気にはなっていた。
「あいつはもう駄目だ」
副会長は私に言った、
「見損なったよ。あんたに振られてめそめそしているくらいならちっとは慰めてやろうか
と思ったのにさ」
「何かあったんですか」
私は副会長に聞いた。この人が会長に厳しく当たることには慣れていたけど、その時の
副会長は信じられないほど憤っているように見えたから。
「最低だ、あいつ。あんたに振られてさ、自分のプライドを保つために下級生に手を出してたよ」
え? あたしは確かに先輩を振った。振った当時は麻人のことが好きだったから。今で
も自分の中には麻人への想いしかないのだけれど、麻人の心には今は二見さんがいた。
今では心の中だけになってしまったけど。それにしても、私は以前より会長に気安く話しか
け、先輩とはお付き合いできないけど先輩と気まずい仲にはなりたくないということをア
ピールするようにしていた。それは私のせいで先輩を傷つけたくない、先輩に恥をかかせ
なくないという想いからの行動だったのだ。
副会長の浅井先輩の話では、石井会長は意外と簡単に私への想いを忘れ新しい恋のお相
手を見つけたことになる。そのこと自体には私には別に異論はなかった。先輩の想いに応
えられない以上、どういう形にせよ先輩が立ち直ってくれるのは喜ばしいことだったから。
でも先輩の相手は麻衣ちゃんだというのだ。
いったいどういうことなのだろう。突然パソコン部に入部した麻衣ちゃん。そしてその
麻衣ちゃんを指導するために生徒会を放り出して彼女に付きっ切りになっている先輩。
浅井先輩によるとその二人が人目をはばからないほどの恋仲になっているのだという。
今まで麻人以外の異性に全く興味を示さなかった麻衣ちゃん。そして私にに好きだと告
白した生徒会長の石井先輩。
その組み合わせにはしっくりと行かなかったけど、仮に本心から麻衣ちゃんと石井先輩
が互いを求めているのであれば、私はそのこと自体に反対する気持ちはなかった。ただ、
そのことを私に吐き捨てるように話した副会長の浅井先輩のことは少し気になってはいた。
副会長はいい役員だった。会長に遠慮はなかったけど副会長としてフォローするところ
ははずさずに、たとえそれが生徒会活動と関係のないプライベートな事であろうとそれが
生徒会の正常な運営に影響するようなことであれば、役員の中で副会長だけは会長に強く
注意していたのだった。
そういう副会長先輩は生徒会役員の見本のようで、あたしはそういう彼女みたいな役員に
なりたいとまで思ったのだけど、あの時会長と妹ちゃんの関係を批判した副会長の話にはな
ぜか心服することができなかったのだ。その時の副会長先輩は、まるで会長と妹ちゃんへの
嫉妬心の発露のような言葉を吐き出していたのだった。まさか、副会長は会長のことが好き
だったのだろうか。
まるでぐちゃぐちゃだった。これでは本当に誰が誰を好きなのか全くわからない。でも
本能的に理解していたこともあったことはあった。
一つは麻人の気持ちだった。彼が二見さんを好きなことは疑いようようがなかった
あたしはそこで無理に考えるのをやめた。麻人は相変わらず食欲がない様子でぼうっと
何かを考えているようだった。そしてその間も彼の視線は、ここにいるはずのない二見さ
んを求めるように周囲を探っていた。
「もっと食べなきゃだめだよ」
私は自分が作ったのお弁当に少ししか手を伸ばさない麻人に言った。
「あんた朝も食べてないんでしょ? 体壊しちゃうよ」
「悪い」
麻人は私に謝った。
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