316:名無しNIPPER[saga]
2016/07/18(月) 23:41:00.19 ID:HbILN8rbo
私は、告白された麻人からそのことを相談されていたので、麻人とその子が付き合い出
したことには別段驚くことはなかったけど、むしろ大変だったのは麻衣ちゃんの方だった。
麻衣ちゃんがブラコンなことはよく知っていたけど、その後の麻衣ちゃんの行動によって、
彼女がここまで麻人のことを慕っていることを、私は改めて思い知らされた。
麻衣ちゃんは意外にも麻人と彼女の付き合いには反対しなかった。ただ、麻衣ちゃんは
麻人に彼女ができた後も、自分と麻人の関係が変わることは絶対に拒否したのだった。
具体的に言うと、麻人は最初は私たちと一緒に登校せず、やはり近所に住んでいた彼女
と待ち合わせして彼女と二人で登校しようとした。でも、麻衣ちゃんは渋る私を引き摺る
ようにして、その待ち合わせ場所に押しかけ、四人で一緒に登校しようとした。別に麻衣
ちゃんは麻人の出来立ての彼女に攻撃的な態度を見せたわけではない。ただ、自分と麻人
の関係が疎遠にならないようにしたのだ。
「勘弁してくれよ」
そういうことが続くと、麻人は私に泣きついた。
「おまえらが朝一緒だと彼女が不機嫌になるんだよな」
「私のせいじゃないもん」
私は麻人に反論した。「麻衣ちゃんが麻人と一緒に行くって、そう言い張るんだからし
ようがないじゃん」
私の話を聞いて、麻人は困ったように俯いてしまった。
・・・・・・結局、麻人の初めての彼女はわずか一週間で麻人に別れを告げたのだった。
そういことがあっても、麻人は麻衣ちゃんを甘やかすことを止めようとはしなかった。
どんだけ妹に甘いんだろう、この男は。私は、麻衣ちゃんのことは自分の実の妹のように
思っていたけれども、さすがにこれは行きすぎではないかという気持ちがした。いくら両
親が不在で二人きりで日々を過ごしているにしても、この先ずっとこのままというわけに
もいかないではないか。私はため息をついた。
その後は何事もなかったように、再び三人で登校する日々が続いた。麻人と麻衣ちゃん
の共依存に近い関係のことは、私の密かな悩みとして心の奥に密かに沈潜していたけど、
それでも慣れ親しんだこの関係は中毒のように、再び私たちを蝕んでいった。永遠にこの
まま三人で過ごせるならそれはそれで幸せかもしれない。兄と妹のことを心配していたあ
たしだったけど、時にはそう思うほどこの関係は居心地が良かった。
それに、自分で言うのもなんだけど、私たち三人の関係は校内ではひどく羨ましがられ
てもいたのだ。麻衣ちゃんは可愛らしい子だった。そして、叩かれるのを覚悟で言うと、
私もまた校内では目立っている方だったと思う。告白してくる男の子も一人や二人ではな
かったけれども、異性と付き合うということがまだぴんとこない私はその全てを断ってい
た。そして、それは麻衣ちゃんも同じだった。
そういう女の子二人にしっかりとガードされている麻人に対して、果敢にアタックする
子はもういなかった。最初の彼女の失敗で、麻人は付き合うには面倒な男という烙印を校
内の女の子たちから押されてしまったらしかった。
そんな私たち三人の関係が初めて本格的に変化したのは、私と麻人が同じ高校を受験し
合格した後のことだった。こればかりはさすがの麻衣ちゃんもどうしようもなかった。私
と麻人が通うことになった高校は電車に乗って四十分くらいかかる。そして、私たちの出
身中学は自宅の最寄り駅とは反対方向だったのだ。
四月に入り初めて私たち三人一組ではなくなった。麻衣ちゃんは一人で中学に登校し、
私と麻人が二人きりで電車に乗って登校する、そういう新しい生活が向かい始ったのだ。
麻人と二人きりの登校が高校の同級生たちの噂になるのは早かった。私と麻人は、高校の
友だちから即座にカップル認定されてしまった。
・・・・・・そして、これまで麻人に対しては異性という感覚を持ったことがなかった私が、
初めて彼を男として意識しだしたのは、二人きりで登校を始めたこの頃からだった。
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