315:名無しNIPPER[saga]
2016/07/18(月) 23:40:11.22 ID:HbILN8rbo
私たち三人はお互いのことを知りすぎるくらいに知っている。麻人と麻衣ちゃんの兄妹
は、幼い頃から両親が仕事で留守がちな家庭で、二人きりで寄り添うようにして毎日を過
ごしていた。その頃から隣の家で暮らしていた私は、自分が一人っ子だったこともあって、
仲の良い隣の兄妹のことを妙にうらやましく思っていたものだった。もちろん、よく考え
れば家には常にお母さんがいてくれた私の方が一般的には恵まれていたと思うけど、それ
でも兄弟というものに憧れていたあたしには、仲の良いお隣の兄妹に憧れの気持ちすら抱
いていたのだ。
引越ししてきてからしばらくは、私は二人のことを羨ましく思いながら眺めているだけ
だった。普通で考えれば年が近く隣同士なのだから、すぐにでも仲良くなれそうなものだ
けれど、兄妹のあまりの仲の良さに怖気づいた私は中々この兄妹に声をかけられなかった
のだ。
そんな風だったから、子どもたちより私たちの親同士の方が先に仲良くなって、そのお
かげであたしは、この兄妹と話ができるようになった時は本当に嬉しかった。そうして知
り合ってみると、この兄妹は私が勝手に思い込んでいたような排他的な性格では全くなく
て、むしろ仲のいい 仲間が増えることを歓迎してくれた。特に麻衣ちゃんの方は、いつ
も麻人と一緒にいたせいで、女の子の友だちが少なくて寂しかったみたいで、私たちはす
ぐに仲良くなった。
それ以来今に至るまで、私たちはずっと三人で一緒に過ごしてきた。朝は私が二人の家
に兄妹を迎えに行き、近くの小学校まで三人で登校する。帰りは必ずしもいつもという訳
ではなかったけど、それでも時間が会えば一緒に下校もした。その頃から、麻人では対応
できない種類の麻衣ちゃんの相談に乗るのは私の役目だった。麻人は男の子にしてはよく
麻衣ちゃんの面倒をみていたと思うけど、それでも洋服や下着や水着のことなどはお手上
げだったらしい。特に小学校も高学年になる頃には、兄妹のお母さんも本格的に仕事を再
開していたから、麻衣ちゃんのこの手の悩みには、(時には私のお母さんにも相談しなが
ら)私が麻衣ちゃんの面倒をみていたのだった。私は麻衣ちゃんが初潮を迎えた日まで知
っていたほどだった。
私たち三人のこうした関係は、私と麻人が揃って中学生になっても何も変わらずに続い
た。私たちが通う中学校は、小学校と隣り合わせに建っていたから、相変わらず朝の登校
は三人で一緒だった。私にとっては、三人でいることが居心地よかったけれど、一年後に
麻衣ちゃんが私と麻人の後を追って同じ中学に入学した頃から、私たちの中にも多少の不
協和音が響くようになってきていた。
中学生になると、周囲の子たちも異性のことをあからさまに意識するようになる。異性
を意識したり噂したり、異性に告白したり告白されたり、当たり間に周囲で行われていた
そういうことが、私たち三人の関係にも影響を及ぼすようになったのだ。
・・・・・・それは麻人が同級生の子に告白されたことから始った。麻人に告白した子は、は
きはきした物怖じしない喋り方が特徴的なボーイッシュな女の子で、クラスの男の子の間
でも密かに憧れている子が多いらしいという噂の女の子だった。その子に告白された麻人
は、人気のある女の子に思いを寄せられて、悪い気がしなかったのだろう。彼はその子の
告白を受け入れた。つまり麻人に初めての彼女ができたのだ。
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