244:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:53:55.76 ID:my8qAWPQo
僕は戸惑いながらもとりあえず母さんのからかい気味の誤解を解いた。それにしても麻
衣が僕の家を訪ねて来るとは予想外にも程がある。以前からいきなり教室に訪ねて来たり
したことはあったけど、まさか休日に自宅に尋ねてくるとは考えたことすらなかった。
母さんが僕の言い訳をどう思ったかはわからないけど、もう僕をからかうのはやめたよ
うで、じゃあ入ってもらうねとだけ言って再び階下に下りていった。
少しして母さんに案内された麻衣が僕の部屋に入ってきた。相変わらず気後れする様子
がない様子だったけど、かと言って馴れ馴れしい感じもしなかった。これなら母さんも彼
女に好感を抱くだろう。
「先輩、こんにちは」
「あ、うん」
僕の返事は自分でも予想できていたようにぎこちないものだった。母さんはそんな僕の
反応を見て内心面白がっていたようだった。
「わざわざお見舞いに来てくれてありがとう。もう熱も引いてるしうつらないと思うから
ゆっくりしていってね」
母さんは麻衣にそれだけ言って部屋を出て行った。
「あ、はい。ありがとうございます」
麻衣も礼儀正しく返事した。
母さんが部屋を出て行った後、僕たちはしばらく黙っていた。僕は麻衣の姿を盗み見る
ように眺めた。学校で見かける制服姿の麻衣は守ってあげたいという男の本能を刺激す
るような、女の子っぽく小さく可愛らしい印象だったから、僕は何となく私服の彼女ももっ
と少女らしい格好をしているのだと思い込んでいた。いくらリアルの女子のファッション
に疎い僕でも、さすがにギャルゲのヒロインのような白いワンピースとかを期待していた
わけではないけど、麻衣なら何というかもう少しフェミニンな女性らしい服装をしている
ものだと僕は勝手に想像していたのだった。
そんな童貞の勝手な思い込みに反して麻衣の服装は思っていたよりボーイッシュなもの
だった。別に乱暴な服装というわけではなく、お洒落だし適度に品もあってこれなら服装
に関しては保守的な僕の母さんも眉をひそめる心配はなかっただろう。そんな麻衣は僕の
方を見てようやく声を出した。
「先輩、具合はどう?」
それは落ち着いた声だった。
僕は急に我に帰り、自分のくたびれたスウェット姿とか乱れたベッドで上半身だけ起こ
している自分の姿を彼女がどう思うか気になりだした。
「うん。明日からは学校に行けると思う。心配させて悪かったね」
僕は小さな声で麻衣に答えた。彼女は僕の具合なんか気にしていなかっただろうけど、
それでもやはり心配はしていたはずだった。それは僕が実行を約束した作戦がどうなって
いるのかという心配だったと思うけど。
「突然休んじゃってごめん。一応、メールはしたんだけど」
そのメールに対して麻衣は返事をくれなかったのだ。でも僕はそのことを非難している
ような感情をなるべく抑えて淡々と話すよう心がけた。
「病気なんだから仕方ないじゃない。先輩が謝ることなんかないのに」
麻衣はそう言って改めて僕の部屋を眺めた。
「あ、悪い。そこの椅子にでも座って」
麻衣を立たせたままにしていることに気がついた僕は、少し離れた場所にあるパイプ椅
子を勧めた。
「うん」
麻衣はそう言って、どういうわけかベッドから離れたところに置いてある椅子を引き摺
って、ベッドの側に移動させてからそこに腰かけた。椅子の位置がベッドの横に置かれた
せいで僕の顔のすぐ側に麻衣の顔があった。
「本当にもう大丈夫なの?」
麻衣は僕の額に小さな手のひらを当てた。その時僕は硬直して何も喋ることができなか
ったけど、胸の鼓動だけはいつもより早く大きく粗雑なリズムを刻み出したので、僕は額
に当てられた彼女の手に僕の鼓動が伝わってしまうのではないかと心配した。
「熱はもうないみたい。先輩のお母様の言うとおりもう風邪がうつる心配はないね」
麻衣はそう言った。
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