239:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:51:02.27 ID:my8qAWPQo
典型的なリア充の麻衣を守ってあげるのは普通なら僕なんかに割り振られる役目ではな
かった。でも、優と池山君や遠山さんと広橋君の複雑な愛憎関係に巻き込まれている麻衣
は多分、今ではこんな情けない僕しか頼る相手がいなかったのだ。
「屋上でいい?」
僕は周囲の好奇心に満ちた視線を自然に無視して、黙って抱き寄せられている麻衣に話
しかけた。麻衣は何も反応してくれなかったけど、僕は彼女を引き摺るように屋上に向か
う階段を上り始めた。
僕たちは黙って屋上のベンチに座っていた。僕は相変わらず麻衣の肩に手を廻して彼女
を抱き寄せていた。麻衣は別に抵抗する素振りを見せるでもなく俯いているままだった。
そのまま数分が過ぎた頃、麻衣はようやく顔を上げて言った。
「ごめんなさい、先輩。せっかくの昼休みなのに心配させちゃって」
「いいよ。僕のことなんて気にしなくてもいいから」
僕は彼女の肩に廻した手に心もち力を込めた。麻衣はそれに逆らわず素直に僕の方に身
を寄せた。
「今朝ね」
ようやく麻衣が消え入りそうな声でぽつんと話し始めた。
「お兄ちゃんと二見さんが手をついないでた」
「・・・・・・そうか」
「それで・・・・・・お兄ちゃん、あたしに自分は麻衣さんと付き合ってるって言った」
「池山君が君にそう言ったの?」
「うん。お兄ちゃん、お姉ちゃんのことも振ったみたいで」
麻衣は裏サイトを見るまでもなく、リアルで優と池山君がいちゃいちゃしているところ
を目撃してしまったみたいだった。
僕はもう小細工じみた慰めの言葉を口にしようとは思わなかった。麻衣の池山君に対す
る深い想いは身に染みて感じていたから。
それは僕のこの先の人生にも影響するような決断だったと思うけど、その時の僕は麻衣
を傷つける優や池山君から彼女を守りたい一心だったのだ。
僕は泣きそうな表情で僕に寄りかかって俯いている麻衣に改めて話しかけた。
「じゃあ、予定通り二見さんの女神行為を暴いて、彼女さんを池山から引き剥がそうか」
麻衣ははっとした様子で顔を上げた。
「最初からそうしたかったんでしょ? 君が決心するなら僕も最後まで付き合うけど」
「・・・・・・先輩」
「君が本気なら僕もいろいろ準備する。こういうことは衝動的にやってもうまく行かない
し、よく計画を練らないとね」
麻衣はまた俯いてしまった。
「それとも君が池山君と二見さんの付き合いを認めて祝福してあげられるなら、僕はもう
何も言わないし何もしない。君もパソ部を止めて今までどおりの生活に戻れるよ」
一応、僕は麻衣に退路を示してあげることにした。麻衣が優と池山君の仲を認めれば、
こんな危険なゲームを始める必要はない。その結果、僕は麻衣を失うかもしれないけど、
僕の将来に対するリスクも無くなるのだ。麻衣がどう判断することを僕は望んでいたのだ
ろう。この時はもうそれすらわからなくなっていた。僕は黙ってただ麻衣が結論を出すの
を待っていた。
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