238:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:50:22.51 ID:my8qAWPQo
その夜、僕はうちの部の副部長が密かに開設し管理人をしている裏サイトを覗いてみた。
そのサイトはくだらない校内の噂や、どうでもいい悪口で盛り上がっている低レベルの掲
示板だと僕は断定していたから、このサイトを見るのは久しぶりだった。
とりあえず最近のレスの付近を中心に見て行くと、探していた優と池山君関係のレスが
付いているのを見つけた。
『××学園の生徒集まれ〜☆彡』
『2年2組の二見さんって、最近感じよくね?』
『あ〜。うちもそう思った。初めは人間嫌いな人なのかなって思ってたんだけど。最近良
く話すけどいい子だよ。成績いいけど偉そうにしないし』
『うちも二見さんから本借りちゃった。つうか今度一緒にカラオケ行くんだ☆』
『つうか二見って可愛いよね。俺、告っちゃおうかな』
『誰よあなた。もしかして2組?』
『違うよ。俺2組じゃねえし。つうか2年ですらねえよ』
『・・・・・・二見って池山と付き合ってるんだよ。知らないの?』
『嘘。マジで!?』
『マジマジ』
『でもさ、池山と広橋って遠山さんを取り合ってたんでしょ? 池山は遠山さんを諦めち
ゃったのかな』
『まあ、夕也が相手じゃ勝ち目は(笑)』
やはり優と池山君は既に付き合っているらしい。
予想していたこととはいえ、このことを麻衣が知ったらと思うと僕は気が重かった。優
と池山君の仲が急接近しているであろうことは麻衣だって予想しているだろうけど、実際
にそれが確定的に真実だと知ればやはり彼女は相応に傷付くに違いなかった。そして優の
女神行為にひどく拒否反応を示している麻衣は、次のステップに進むことを僕に要求する
かもしれない。
今まで僕は優に対して実際には何の手出しもしていなかった。麻衣の相談に乗りつつ麻
衣と親しくなって行っただけだった。でも麻衣が本気で優と池山君を別れさせようと思い
詰めたら、僕はその手段を提供せざるを得なくなるだろう。それが優の人生を変えてしま
うほどひどいことであっても、ここまで麻衣に惚れ深入りしてしまっている僕には麻衣の
要求を断ることはできないだろう。
翌朝、僕は登校中に麻衣と出会わないかと期待したのだけど、彼女の姿は見当たらなか
った。そしてこれは幸いなことに僕は副会長にも遭遇することなく教室に辿り着いたのだ
った。
昼休みになって今日は学食か購買かどっちにしようかと迷いながら教室を出たところで、
僕は教室の前で所在なげに佇んでいる麻衣に気がついた。昨日の裏サイトのレスを思い出
して気が重くなった僕は、無理に笑顔を装って麻衣に声をかけた。
「やあ。もしかして今日もお弁当を作ってきてくれたの」
麻衣は俯いたまま黙っていた。僕は慌てて言葉を続けた。
「ごめん・・・・・・冗談だよ。何か用事があった?」
麻衣は黙ったままだった。今にも泣きそうな彼女の表情が僕の目に入った。
僕は何か自分にもよくわからない衝動に駆られて麻衣の肩を抱き寄せた。後になって考
えてみると、ヘタレの僕が同級生たちに好奇の視線に囲まれている状況でこんな思い切っ
た行動を取ったことは自分でも信じられなかったけど、その時は目の前で震えている小さ
な姿の少女を泣かせてはいけない、誰かが守ってあげなければいけないという思いだけが
僕をやみくもに突き動かしていたのだった。
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