女神
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235:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:42:31.29 ID:my8qAWPQo
 その日の昼休み、僕はこれでさっきから何度目かわからなくなっていたけど、朝の出来
事を思い返してそのことの持つ意味を考えていた。朝の校門の前で、どうして麻衣はあそ
こまで僕に肩入れしたのか。副会長と僕のトラブルなんか彼女には全くかかわりのない話
だった。麻衣はきっと、浅井君のことは生徒会副会長として知っていただけで、面識すら
なかったはずだ。副会長が僕が生徒会室に顔を出さないことで責めていた言葉を聞いて、
麻衣は自分に時間を取らせたことに罪悪感を感じたからだろうか。

 でも、それも不自然だ。僕はそう思った。副会長は直接的には僕が部活にかまけている
ことを責めたのではなく、僕が遠山さんを避けようとして生徒会活動に参加しなくなった
ことを責めていたのだ。だから麻衣が副会長の言葉を聞いたとしても、その言葉に彼女が
罪悪感を感じる必要は全くない。

 麻衣が僕のことが好きで、その僕が副会長に責められていることに我慢ができなかった
からか。そう考えたい気持ちは僕の心の底に根深く存在していたけど、冷静に考える癖が
ついている僕にはそう楽天的には考えらなかった。

 麻衣が僕を頼っているのは自分のしようと考えていることを実現するのに僕を必要とし
ているからだ。確かに最近の彼女は僕の手を握ったり、別れ際に頬にキスしたり、腕に抱
きついたりという思わせぶりな行動をしている。でも、それは男として異性として僕を意
識しているわけではなく、臨時のお兄ちゃんとして僕のことを認識しているからだろう。
そして最近よく理解できてきたのだけど麻衣の身びいきはすごく激しかった。麻衣が池山
君や遠山さんに対して捧げる愛情と忠誠は無限大だった。それに比べて周囲の生徒たちへ
の彼女の関心は、中庭の花壇に這っている虫に対する関心とほとんど変わらないくらいだ
った。その虫たちの中には麻衣に対して熱い視線を向けている男子もいたと思うけど、彼
女はそんな視線に気がついたとしてもそれには全くの無関心に近い態度を取っていたよう
だった。

 ついこの間までは僕もその虫たちの一人に過ぎなかった。それが、優と池山君を別れさ
せるという目標を麻衣と共有し出してから、僕も臨時のお兄ちゃんとして彼女の意識の中
では身内扱いされるようになったようだった。

 そう考えると、今朝の麻衣の言動は何となく理解できる気がした。僕のことなんか、男
としては意識していない彼女だけど少なくとも今は、彼女の意識の中では僕は彼女が守る
べき身内のカテゴリーに入ったのだろう。そして僕は最初に妹に協力を持ちかけた時の彼
女のセリフを忘れてはいなかった。

『君のことが異性として気になっている』

 そう言った僕に対して麻衣は真面目な口調で釘を刺したのだった。

『・・・・・・先輩。あたし、今のところ誰かと付き合うとか考えていなくて』

 そうだ。僕は出だしで一度彼女に拒否されているのだ。最近の麻衣の言動に惑うと最後
には彼女を困惑させ自分も傷付くことになる。

 恋人にはなれなくても、麻衣が見知らぬ三年生の先輩に噛み付くほど僕のことをかばっ
てくれただけでも十分じゃないか。少なくとも僕は麻衣にとって地面を這う虫ではなくて、
身内の仲間入りを果たしたのだから。

 ふと気がつくと教室内にはもうあまり生徒たちは残っていないようだった。学食や購買
に行く生徒たちは昼休みのベルと共に教室を出て行ってしまったから、ここに残っている
のは教室の机を寄せ合わせて何人かのグループでお弁当を広げている生徒たちだけだった。
今日は秋晴れのいい陽気だったから、弁当持参の生徒たちも中庭や屋上に行っているのか、
教室に残って食事をしている生徒は数人くらいしかいなかった。


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