233:名無しNIPPER[saga]
2016/05/06(金) 22:38:43.77 ID:my8qAWPQo
僕はそれに対して何も言い訳できなかった。本当は遠山さんなんて好きじゃなかった。
優と池山君の関係を知りたいために、僕は遠山さんに告白する演技をしたのだ。でもそれ
を告白すれば僕はもっと最低の人間として認識されてしまう。そして、どんなに否定しよ
うが僕が麻衣に惹かれてしまったことも事実なのだった。
僕はその時はもう、硬直していて何も言い訳できる状態ではなかった。麻衣にまで僕が
遠山さんに告白したことを知られてしまった。僕は、僕の腕に抱き付いている麻衣がこの
時どんな表情をしていたのか確認する勇気すらなかった。
「言い訳もなし? あんたいっそもう生徒会長やめたら?」
副会長は妙に落ち着いた声で僕に言った。こいつがこういう声を出すときは本当に怒っ
ている時なのだ。これまでの生徒会での付き合いで僕はそのことを知っていた。
どちらにしても、もう僕には副会長に言い訳できなかった。生徒会長であることとパソ
コン部の部長であることだけが、中学時代と違って無冠では全く人気のない僕の唯一の拠
りどころだったのに、それさえ僕は失おうとしていたのだった。
その時、僕の腕に抱きついていた妹はそのままの姿勢で副会長に言った。
「浅井先輩って、もしかして石井先輩のことが好きなんですか」
麻衣のその言葉にその場が一瞬で凍りついた。
「あ、あんた、何言って」
僕は副会長がここまで狼狽した姿を見るのは初めてだったかもしれない。彼女の表情は
蒼白になり、そしてすぐに紅潮した表情でになった。麻衣は副会長の名前を知っていたよ
うだった。
僕は、この時初めて僕の腕にくっついている麻衣を見た。まだこの間まで中学生だった
幼い外見を残した彼女は、一年生にとっては自分よりはるかに大人に思えるだろう副会長
を前にして、少しも臆した様子がなかった。そして、麻衣は僕の方など振り向きもせず真
っ直ぐに三年生の副会長を見つめていた。
「あたしに嫉妬してるんですか? だったらお姉ちゃんのことを心配してるような振りを
するのはやめて、石井先輩に『あたしとこの子とどっちか好きなの?』ってはっきり聞け
ばいいんじゃないですか」
副会長も今や紅潮した顔のままで麻衣を睨んでいた。僕はいたたまれない気持ちを持て
余して、結局黙って下を向いてなるべく早くこの修羅場が終ることだけを心の中で祈って
いた。それに校門の前に近いこともあり、みっともない三人の男女の様子はすでに相当の
生徒たちの視線を集めているようだった。
「あと、浅井先輩は勘違いしてますよ」
妹は平然と続けた。
「先輩はお姉ちゃんに振られたからあたしに乗り換えたわけじゃないですよ」
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