女神
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209:名無しNIPPER[saga]
2016/05/01(日) 23:02:01.52 ID:lwUWxol4o

 ―――彼女は僕が混乱している間、黙って僕を観察していたようだった。僕の混乱振り
に飽きれるでもなく、助け舟を出すでもなく、自分の話を強引に進めるわけでもない麻衣。
その表情からは何やら僕のことを見極めようとしているような冷静さが感じられた。

 僕は、自分で勝手に思い込んでいた彼女の印象を改めざるを得なかった。この子は決し
て甘やかされた可愛いだけの幼い少女ではない―――優といい麻衣といい、僕が魅力を感
じる女性はなぜ例外なく複雑な思考を持っているのだろうか。かつて僕は優のことをとて
も中学生とは思えないほどしっかりと自分を冷静に見つめていると思ったことがあったけ
ど、一見幼い甘えん坊のような、そして大人しそうな麻衣さんも実は優と同じような複雑
な考えを秘めている少女らしかった。

 僕はため息をついた。僕は何でこういう面倒くさい、自分の考えを心に固く秘めている
ような女の子に惹かれてしまうのだろう。今にして思えば遠山さんが僕を傷つけまいとし
て取った単純でひたむきな行動が懐かしく思えるほどだった。その行動に結果的に僕は傷
付いたのだけど、少なくとも彼女が何を考えて僕に接近したのかは簡単に理解できたのだ
から。

「まあ君が見たがっているスレがどれなのかはわかったよ。URLも記されていたし」

 僕は気を取り直してそれまでじっと僕の反応を見ていたらしい下級生に話しかけた。

「でも、何で見たいのかという動機は全然わからないね。最低でもそれくらいは話しても
らえないかな。前にも言ったけど下級生に十八禁の画像の見方を教えるんだったらそれな
りの理由は聞きたいな。僕の生徒会長としての立場もあるし」

「・・・・・・それはこれからお話しします―――そうしたら先輩、あたしのこと助けてくれ
る?」

 麻衣は表情を一変させ、再び頼りないけど可愛らしい下級生らしい表情になった。

「―――あたしの味方になってくれる?」

 僕くらい人間観察ができて、僕くらい他人が何を考えているのかわかるのなら、こんな
単純な手にひっかかることはないはずだった。麻衣にとって僕は都合のいい先輩に過ぎな
いのだろう。でも僕の目的に近づくためには麻衣と親しくなる必要があるのは自明の理だ
ったし、何より僕は麻衣に本気で惹かれていたようだった。辛い思いをするかもしれない
とわかってはいても、優と池山君の関係を知りたいという目的が、麻衣と対面して話を重
ねるにつれ次第に薄れてきたほどに。

「そうするよ」

 僕は頼りなく守ってあげたいまだ幼さを残しているような女の子、麻衣に返事した。

「君を助けたいし、何より僕は君のことが好きだから」

 僕はこの時、この段階で口にするのは危険なことまで喋ってしまっていた。君のことが
気になるではなく君のことが好きだと僕は宣言してしまったのだった。それは麻衣に引か
れるかもしれないという意味からも、麻衣に弱みを握られて先導を奪われるかもしれない
という意味でも最悪のタイミングの告白だった。でもその告白を口にした途端、それが今
の僕の真の想いだということに気がついた僕は逆に気が楽になったのだった。

 そして麻衣はその言葉を聞いてもドン引きすることもなく勝ち誇る様子も見せなかった。
彼女は僕の反応が当たり前のように淡々と話を再開した。

「先輩、お姉ちゃんとは親しいの?」

 麻衣は予想外の方に話を進めた。

「特に親しいというわけでは・・・・・・生徒会で一緒だからよく話はするけど」

 麻衣は僕が遠山さんに告白して振られたことを知っているのだろうか。小学生の頃から
の知り合いで、副会長の言うように最近まで毎日一緒に登校する間柄なら、僕なんかに告
白されて困惑した遠山さんが麻衣に相談したとしても不思議はない。でもそれは確実な話
ではなかったから、 とりあえず僕は無難な返事をしたのだった。

「そうか。じゃあお姉ちゃんは何も言わなかったかもしれないけど―――先輩、あたしお
兄ちゃんのことが大好きなんです」

 遠山さんからは麻衣の話は聞いたことがないのは確かだったけれど、彼女の極度なブラ
コンぶりについては副会長から聞いたことがあったから、そのこと自体には僕は驚かなか
った。ただ、どうしてそんなことをわざわざ僕に話すのだろうという疑問は感じた。麻衣
が優と自分のお兄さんとの付き合いに不満を感じているからだろうか。

「あたし昔からお兄ちゃんが好きで、今まで何度も男の子に告白されてもいつもお兄ちゃ
んと比べちゃって」

 麻衣は続けた。

「あたしももう高校生なんだし、実のお兄ちゃんと恋人同士になれるわけなんてないって
わかってるんだけど」


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