女神
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210:名無しNIPPER[saga]
2016/05/01(日) 23:03:26.13 ID:lwUWxol4o

 もうか弱い少女の振りをする余裕は彼女にはないようだった。この告白は嘘ではない。
そう直感した僕はいろいろと混乱している自分の心を静めて、クライアントの話に没頭す
る姿勢になった。過去の経験が生きていたのか、僕は自然に傾聴する体勢に移行すること
ができたのだった。

「続けて」

 僕は彼女の目を見ながら言った。

「お姉ちゃんが昔からお兄ちゃんのことが好きだったことは知っていたの。そしてお姉ち
ゃんがあたしのお兄ちゃんに対する気持ちを知っていて自分の気持を無理に抑えていたこ
とも」

 麻衣は冷静に話を続けていたようだったけど、テーブルの下で握り締めていた手の震え
が彼女の装った冷静さを裏切っていた。

「君は遠山さんのことが大好きなんだね」

 僕は穏やかに口を挟んだ。

「・・・・・・うん。お姉ちゃんは昔からあたしのことを気にしてくれて、うちは昔から両親の
仕事が忙しくて普段家にはいなかったんで、お兄ちゃんとお姉ちゃんがあたしの両親のよ
うだった」

「君はいいお兄さんとい、幼馴染のいいお姉さんに恵まれたんだね」

 僕は彼女に話をあわせた。彼女はそうやってその二人に甘やかされ守られて成長してき
たのだろう。

「うん。お兄ちゃんとお姉ちゃんには本当に感謝してる。でも・・・・・・そんなお姉ちゃんに
あたしは辛い想いをさせてたんだなって思ったら、お姉ちゃんに申し訳なくて」

「それで君はどうしたいの」

「どうしたいというか、この間お姉ちゃんに言ったの。もう自分に正直に素直になってっ
て。あたしのことはもう気にしないでって」

「君はそれでよかったの?」

 ブラコンという言葉では言い表せないほど池山君に依存してきた彼女にとってはそれは
思い切った、辛い選択だったろう。

「うん。あたしもそろそろお兄ちゃんを卒業しなきゃって思った。今でも一番好きなのは
お兄ちゃんだけど、あたしがお兄ちゃんと結ばれることなんてないんだから、それなら二
番目に好きなお姉ちゃんにお兄ちゃんの恋人になってほしいって」

 その頃になると麻衣は僕の様子を気にする余裕もなくなったみたいで、手が震えるどこ
ろか全身を震わせ目にはうっすらと涙を浮かべるようになっていた。

 僕は次の言葉を催促せず彼女が落ち着きを取り戻すのをじっと待った。心情的には麻衣
の手を握るか肩を抱くくらいはしたかったけど、それはせっかく心を開いた彼女を警戒さ
せてしまうかもしれない。それにこの頃になるとだんだん僕は落ち着きを取り戻してきて
いた。むしろ今では取り乱しているのは麻衣の方だった。僕は心理的に彼女より優位に立
ったということもあり、彼女が再び話し出すのを余裕で待つことができたのだった。

「あたしがお姉ちゃんにそう話したとき、お姉ちゃんは最初は驚いていたの」

 しばらくして自分の袖で涙を拭いた麻衣が話を再開した。

「だから、あたしは最初はお姉ちゃんがお兄ちゃんのことを好きだと思っていたのは勘違
いかなって思ったんだけど・・・・・・そうしたらお姉ちゃんが、麻衣ちゃんありがとうって言
って」

 ここで彼女はまた俯いて涙を浮かべたけど、今度はそれほど取り乱すことはなかった。

「それで、その後何が起きたの?」

 僕は興味本位の質問と取られないよう努めて静かな口調で聞いた。

「お姉ちゃん、お兄ちゃんに告白したんだけど・・・・・・お兄ちゃんにすぐには返事できないって言われて」

「保留されたってこと?」

「うん・・・・・・。一応、親友の夕也さんがお姉ちゃんのことが好きみたいで、お兄ちゃんは
そのことを気にしてるらしいんだけど」

「一応ってどういう意味かな」

 僕はそこがかなり気になったので、本当はまだひたすら話しを聞きだしていなければい
けない段階なのだけれど、思わず突っ込んでしまった。


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