末妹「赤いバラの花が一輪ほしいわ、お父さん」(最終章と後日譚)
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77: ◆54DIlPdu2E[saga]
2016/01/30(土) 01:34:17.44 ID:bj+dknBb0
(師匠「少女との…兄妹との別れは済んだか?」)

(野獣「ええ」)

(師匠「寂しいだろう?」)

(野獣「……二人とも笑顔でここを発ち、笑顔で家に帰り、そしてまた…笑顔でここに来てくれますよ」)

(野獣「だから私も悲しい顔はしません」ニコ)

(師匠「ふふ、強がりおって」)

(野獣「菫花がずいぶん頑張りましたから、私とは違う数十年をこれから歩き出すために」)

(野獣「だから私だって負けずに頑張り通します」)

(師匠「確かに頑張ったわな、あいつにしては、と前置きが必要だが」)

(野獣「大抵の人にはどうってことない行為が、彼、いえ、彼と私には確かに試練でしたよ。馬に乗る、外の世界に踏み出す」)

(野獣「……両親の肖像画に向き合う」)

(師匠「あいつは『絵は絵』だと、『今度は普通にここへ立ち入れるようになる』と言った」)

(師匠「お前にとっても、そうか? 仮想の窓の術であの部屋を覗けるか?」)

(野獣「……半分は菫花の強がりでしょう」)

(野獣「それでも、次に入る時はもう倒れるほどの圧力を感じる事もないでしょう、その程度には間違いなく強くなった」)

(野獣「しかし私には……未だに……」)

(師匠「ん?」)

(野獣「……件の絵ですが、屋敷に師匠や菫花が暮らしているうちはともかく、数十年後、百年後」)

(野獣「あの絵を後世に残すべきか、世間に忘れ去られたまま静かに葬るべきか」)

(野獣「私は菫花が絵に向き合ったあの日以後、何度かそのことを考えました」)

(野獣「そして描いた画家の意志は、私にはどう考えても……願わくばなかった事にしたかった、としか」)




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