魔女「ふふ。妻の鑑だろう?」
1- 20
99: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/09/05(土) 01:09:14.25 ID:X+mP6cx90



勇者「帰ろーか。
   説明も終わったし、君も聞きたい事は聞けたよね」

戦士「………ああ」


廃棄場を後にする。

…ふと、想像してしまう。
ゴミの山に佇む彼女の姿を。
たったひとりで廃棄物の山に立ち向かう彼女の姿を。

彼女の小さな身体は、油や赤錆で汚れている。
野ざらしの廃棄場では雨露をしのぐ事もできず、
設備面から始めなければならなかった。

これまでは設備の整った学院でやっていた事だ。
大型の機械は外注で済んだ。
冷遇されていたとは言っても、
手ずから作るのは炉心だけでいい。
稼働試験もチームが組まれ、
予算内であれば失敗だって許される。

ここにあるのは山のようなゴミだけ。
設備も、工具も、なにもかも元はゴミ。
作業着を好んでいた理由が今はわかる。
手が擦り切れ血をにじませながら、
彼女は一人でゴミから宝石を作ったのだ。


戦士「……………なぁ」

勇者「ん?」

戦士「鉱山都市の人間は、新型の魔力炉の建造に協力したのか?」

盗賊「追放された魔法使いですから、当初は冷ややかな対応だったそうです。
   学院には苦しめられていましたから。
   しかし彼女が新たな魔力炉を作るといい、
   それが形になりだした頃、自然と人が集まったそうです。
   魔女も定期的なメンテナンスを約束しました。
   それからしばらくは良い関係を築けたそうですが、
   学院との関係がこじれ出した頃、
   魔女は姿を消したとか」

戦士「そうか。よかった」

勇者「なんで?」


廃棄場に背を向ける。
かつて彼女がいた場所。
彼女の痕跡は、魔力炉では、なかった。


戦士「報われなきゃ、おかしいからな」






<<前のレス[*]次のレス[#]>>
585Res/472.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice