449: ◆DTYk0ojAZ4Op
2016/03/28(月) 01:43:54.62 ID:IMgzJVX60
外からは雨音が絶え間なく耳に届く。
魔法使いである彼女の耳は、その中に微かに紛れる、聞き慣れぬ物音をも聞き分けた。
友人が言う処によると魔翌力炉を作ってからというもの、
学院に彼女の身柄を拘束しようという動きがあるらしい。
しかし所詮そのような事、はじめから覚悟していた事だ。
評議会にもいずれ姿を消す事になるとは伝えてある。
追手がかかれば迎え撃ち、しかる後に身を隠しても遅くはない。
息を殺し身を固め、敵を待った。
しかし数分が経っても、気配を相変わらず感じるも、襲われるような気配を感じなかった。
魔女「…これは、戦闘音、か?」
耳を凝らす。
引き絞られた弓弦が軋む。
放たれた矢は雨を引き裂き、獲物を確実に捉える。
侵入した魔法使いたちはその矢速を知覚し切れず、音もなくこめかみを貫かれた。
遮蔽物のない小屋の周辺、それは射手には格好の狩場となるのだろう。
雨に煙る視界にあぐらをかき姿を消さなかった魔法使いたちにそれを防ぐ術はない。
放たれる音は八度。
矢はそのひとつも的を外さず、侵入者は全滅した。
異音が消えた小屋へと、足音が近付いてくる。
気配を[ピーーー]意図を見せない、堂々とした足音だ。
足音は小屋の前で止まり、ゆっくりと三度、戸が叩かれた。
魔女「君は、誰だ?」
そして彼女は、客人を迎え入れた。
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