359: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/11/23(月) 01:35:23.59 ID:9DwdlqBj0
寄せては返す波間に揺蕩う意識。
四肢に感覚は無く、波の鼓に綯い交ぜにされた自己は混濁とした意識をより希薄にする。
揺られ、流れ、そして岸辺へと押し戻される。
海の先には死者の国。
どれだけの時間が経ったのか、そもそもここに時間などは意味をなさぬのか、
まぁ、とにかく、暇だ。
さて、状況を整理しよう。
あの日、故郷で。
「あの数の魔狼を、一人で。
確かに、大した腕だ」
俺は魔物の群れを相手に、街中を駆け回っていた。
その時彼女の使い魔を介した念信があり、
彼女は民の避難を手伝っていると聞いた。
そこで、念信が途切れた。
次に会った時、彼女は傷を負っていた。
念信が途切れた時、俺には彼女の身になにか起こったとしか思えなかったが、
腹に受けた傷はひとつのみ。
恐らく魔物の爪によるものだ。
だが、念信が途切れる時の声色には少しの焦りも感じられなかった。
つまり、念信は彼女により、切られたのだ。
それがなにを意味するかはわからないが、
重要な事は念信が途切れた間、何が起こったかだ。
彼女の魔法の腕前を考えれば、あの程度の魔物に容易く屈する事など考えられない。
デーモンがそこに居たという事も考えれば辻褄は合うが、
『既に手負いの状態で眼前に現れてくれるとは!!!!』
彼女の傷はデーモンによるものではない。
彼女が言った、第三者の意図。
彼女の傷がその第三者によるものだとすれば、
あの場には、街の者、攻め寄せたデーモンと魔物たち、
そのどちらにも属さない、何者かが居た事になる。
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