351: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/11/23(月) 01:22:34.01 ID:9DwdlqBj0
賢者「愚かだと言いたいのね」
似た話を、どこかで聞いた。
魔法とは引き返す事だと。
結果を知らなければ魔法は使えないのだと。
少年「愚かだよ。
でも、魔法使いが愚かでは立ち行かないでしょ?
だからみんなほんとは魔法使いじゃないんだ。
僕に言わせればね」
賢者「うふふ。評論家気取りかしら。
随分と能弁なのね」
少年は少しだけ笑みを浮かべ、
忘れ去られ、苔むし、澱み、腐りきった沼のような瞳を僅かに歪め、
その双眸に初めて賢者の姿を捕らえる。
拭い去れぬ違和感と未知への恐怖に、
賢者は思わず身を竦ませる事もできずただ身動ぎを止めた。
少年の声はまるで脳へ直接響くかのようで、
反芻する言霊は脳髄をごりごりと軋ませる。
少年から目を離せない。
耳を塞ぐ事もできない。
大きな手で顔を掴まれているみたい。
空気の震えを感じさせない声は、ともすれば、
自らの心の声なのかと錯覚してしまうようだった。
少年「だから思うんだ。
ただの魔法が使える人なら、意思さえあればいいんじゃないかってね」
賢者「…………意思…」
少年「肉体なんてめんどくさいもの、必要ないんじゃない?
あ、でも、アストラル体はやわっこいから、
まぁほらあれだよ。
要は身体がどんなのでも別に大した問題じゃないんじゃないかって」
賢者「………………ぁ、」
少年「魔法は随分と進歩したね。
かつて精霊と対話する力は森に棲むエルフたちだけのものだった。
神聖魔法と銘打たれた神職者たちの秘伝も、魔法の範疇である事が証明されて、
教会は力を失った。
でも、それらはみな元々あったものだ。
…ここらで、生物として次のステージに進んでみるべきじゃない?
違うかな?」
585Res/472.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20