魔女「ふふ。妻の鑑だろう?」
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347: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/11/23(月) 01:18:01.00 ID:9DwdlqBj0



魔法の王国領の小さな村で宿を取る。
村は慌ただしくも、人の数は少なかった。
それも無理の無い話だ。
ここは中央王国に程近い小さな村で、戦争になれば戦禍を被るに違いなく、
更に20キロほど離れた場所に魔法の王国の砦がある。

埃っぽく、著名な出身者も居なければ、
特別なものを産出するわけでもない、存在する意義を見出だせない村だ。
宿は1件だけ。村唯一の酒場も兼ねているようだが、
自分以外に客の姿は見られなかった。


賢者「みんな、どこへ避難するのかしら?」

店主「避難先なんぞないよ。
   皆できるだけ北に行こうって肚だ。
   しかしまぁ、いつの間にか商人どもがやってきて、
   軍票欲しさにひと稼ぎしようとしとる。
   うちもそうだが」

賢者「…勝敗は見えてるものね。
   現金なものだわ」

店主「ま、学院が痛い目に遭うなら俺らとしちゃ願ってもない話だ。
   …と、失礼。
   あんたもしかして魔法使いか?」

賢者「うふふ、だったらどうするの?」

店主「………いや、
   どうしようかねぇ」


店主は体裁の悪そうな顔をして、それきり奥に引っ込んでしまった。
…学院の魔法使いたちの傲岸な振る舞いは魔法の王国中に知られている。
血税で成り立っておきながら市井を見下す精神性。
導士たちは国民を虫程度にしか考えておらず、
あろうことか催眠を掛け同意書を作成させ、民を対象に実験を行う者まで居る。
政府はその振る舞いを見てすらもいない。
なぜなら、政府もまた、魔法使いのみを人として扱っているからだ。

しかしそれでも民草は皆魔法使いに憧れる。
国土の肥沃さに恵まれぬこの地に豊かさをもたらしているのは魔法技術の恩恵に他ならない。
荒れ野に近いが故に雨が降らず水資源に乏しく、夜は寒く昼は暑い。
土は石だらけでろくな作物が育たない。
北部は極寒地帯に近く、とても人の住める環境ではない。

ならば魔法使いの選民思想が根付くのも自然と言えるだろう。






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