345: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/11/23(月) 01:14:08.28 ID:9DwdlqBj0
朝方のうちに烽火台に着くように、
日の出を待たず登頂を開始する事にした。
携行魔力灯のつたない光を頼りに闇の山中を歩く。
樹林帯の山道は険しく、霧が身体に張り付き、
汗をかいたような錯覚を覚える。
気温はむしろ低いのに身体が茹だるように錯覚してしまう事が、
余計に体力を奪う原因なのだろうか。
戦士「さっさと林を抜けたいな、こりゃ。
魔物に出くわしませんように」
烽火台は山の中腹、林を抜け岩肌が目立つようになれば見えてくると聞いた。
地元の老人の話では4時間も登れば着くそうだが、その見通しが甘かった事には存外すぐに気付いた。
山道に慣れていない自分では、何時間かかるのかわからない。
手持ちの焼き菓子を齧り、更に林を歩く。
陽の光が顔を出し、気温が上がり、
疲れから鈍く熱を持つ膝をひたすら動かし続ける。
そうして6時間後、視界が開けた。
時刻は11時。
地元の人間しか知らぬ道があるのか、ペースが遅いのかはわからないが、
とにかく空き地に出た。
まだまだ余力はあるが、一息入れる事とする。
高地は空気が薄いと聞く。
6時間登っただけで、随分と息苦しいものだ。
岩場に腰を下ろし、来た道を確認すると、林の向こうに大きな湖が見下ろせた。
旅路の気の重みを差し引いたとしても、なかなかに素晴らしい見晴らしなのだろう。
前方には樹林帯が見下ろせ、そのすぐ先にまた山が見える。
その山の中腹に、小さく小屋が見えた。
間抜けな事に、どうやら登る山を間違えたようだ。
小さくため息をつく。
陽の差さぬ樹林帯が方向感覚を狂わせたのだろうか。
どうにかして、枝尾根伝いに回れないかと眺めていると、
小さく、唸り声が聴こえた。
戦士「……………」
小屋を眺める、その背後。
少し離れた岩場に、こちらを伺っている四足歩行の魔物が見える。
体毛の薄い褐色の肌。
野蛮な細い目と大きな胴体を、力強く太い四肢が低く屈ませ、
醜穢な口元は巨大な牙を剥いている。
その体躯は馬ほどもあり、太く響く唸り声は虎を思わせた。
更に不穏な事に、その背後には林が広がっている。
戦士「…魔狼か。
群れ、だろうなぁ…」
1体でもなかなかの強敵だが、魔狼はその名の通り、
狼のように群れをなして行動する。
胸の飾り毛を見せつけるように魔物は誇らしげに遠吠える。
獲物を見つけた事を知らせているのだろうか。
姿を現していた1体が岩を蹴ると、林から次々とまた魔狼が飛び出してきた。
岩場を駆ける音はまるで鼓を打ち鳴らすが如くその体躯の大きさを予感させ、
涎を撒き散らし剥かれた牙がその殺傷力を如実に表わしていた。
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