318: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/10/22(木) 01:33:02.55 ID:GXsKHRI30
勇者「―――ぁ、ぅぁ―――ッ…」
太く重苦しい音と、高い金属音がして、
勇者の額に光っていた"神託の証"が宙を舞う。
衝撃は鉢金を通しても充分に脳を揺らしたようで、
勇者は額を押さえ蹲った。
戦士は盗賊の手に握られた武器を目にし、記憶を巡らせる。
記憶が正しければあれは東洋で生まれた暗器の一種だ。
縄の先に金属の重りをつけ、振り回し攻撃する。
それなりに遠心力をつけなければ効果的ではないためか、
盗賊は一度背で振り回してから攻撃に移った。
武器の持ち替えからディスアームまでとそれは同時に行われた事。
一朝一夕でできる芸当ではない。
勇者「……暗器、使い…っ」
盗賊「―――旦那、拘束をお願いします。
最悪眠らせても」
戦士「紐なんて持ってねーよ。
それ、貸せ」
戦士は盗賊から流星錘を受け取り、勇者の腕を後ろ手に縛る。
弾かれた鉢金を見やると、大鎚で叩いたかの如く、見事にひしゃげていた。
鉢金が無ければ死んでいると見て間違いない。
盗賊「すみません、勇者殿。
しかし、あなたの望みとは…」
勇者「…うぐ…わ、かってる、はずだよ。
僕の望みは、ずっとひとつ」
盗賊「………私は。
あなたがこうして変わり果てて行く姿を、
ただ見ていただけだった」
勇者「…………そうだ。
君は、ただ見ていただけだった。
いや、…初めは。
見てすらもいなかったんだ」
585Res/472.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20