魔女「ふふ。妻の鑑だろう?」
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317: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/10/22(木) 01:30:22.99 ID:GXsKHRI30



勇者「………はぁ、はぁ………つ、よいね、ほんとに…」


だが勇者は同時に、確かな血の滾りも感じた。
戦士のファイターとしての技量はまさに無双のものだが、
勇者はそもそも剣と魔法とを複合的に用いる魔法剣士だ。
決して武器による戦闘のみで優劣が決まる訳はない。

難敵を前に、自らの長所を頼りに血が滾るなど、
そんな清冽な覚悟はとうに捨てたものと思っていたが、
どうやら武人としての自己も捨てたものではないらしい。
多少の距離を取り、向かい合う。
荒い息をつく勇者と対照的に、戦士は汗ひとつ流していない。

そのとき、勇者の真横から、気配を殺して見守っていた、
壮年の男が斬りかかる。
戦士との剣戟で疲弊した事が災いしてか、
先程まで圧倒していた相手の連撃さえ、精々凌ぐ事しかできない。
盗賊の短刀が勇者に届く事こそ決して無いが、
勇者の力はもはや盗賊と伯仲の領域まで落ち込んでいた。

剣戟の中、盗賊の左手が腰に伸びる。
同時に盗賊は一瞬のうちに胸元で右手の短刀を逆手に持ち替え、
勇者の握る剣の鍔元に短刀の背を絡ませた。


勇者「――――ッ!?」

盗賊「お許しを」


絡ませた腕を右へ振りぬき、勇者の側頭部が露わになる。
身を捩る勢いをそのままに盗賊は左手を振るう。

その手には、紐の先に金属塊のついた武器が握られていた。






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