316: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/10/22(木) 01:29:49.63 ID:GXsKHRI30
勇者「捕まえる気?」
盗賊「そうです。
あなたが"彼"の命で動いているとすれば、
まずあなたの身柄を確保しなければ」
勇者「……そうだよ。
でも勇者ってのは、王の命令で動くものでしょ」
戦士「なんだかわかんねぇが諦めろ。
2対1だ。
趨勢は決まっただろう」
戦士は立ち上がった盗賊と挟む形で勇者と対峙し、
その中で戦士一人のみ、摺り足でじりじりと間合いを詰める。
接近戦しか脳が無いという事は実に不便だ。
だが立ち合いとは長所の潰し合いといえる。
勇者はまごうことなき強者であり、
どんな強者に総合力で劣っていようと、
「接近すれば打ち勝てる」という強みを持つ戦士もまた、
超人の域の者であるという証として過言無い。
先に仕掛けたのも、やはり戦士。
彼にとって細かな技など必要なく、勇者にとっても警戒すべきはその威力のみ。
ただ実直な突き込みを、勇者は僅かに身を捻り躱す。
しかし――――
勇者「……は、やっ……!!」
その突き込みの速度は、勇者の想像を遥かに超えていた。
繰り返される刺突と縦横無尽な薙ぎ払い。
戦士が踏みしめる蹴り足は床を割り、荒れ狂う薙ぎ払いは、
暴風のようにホールの机や椅子を舞い上がらせる。
勇者はひたすらに追われる刃先を近づけないよう、
追い散らされる鹿のごとく防戦に徹する事しかできず、
武器使いとしての技量の差を、ひしひしと肌に感じていた。
585Res/472.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20