279: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/10/05(月) 03:36:42.08 ID:D2uU4S3W0
勇者「…僕から、隠れてたね」
戦士「お前の見落としじゃないか?」
勇者「…今の、魔法じゃん。
それにこの魔力の匂い。
凄く、むかむかするなぁ」
ブルーメタルの鎧が光る。
勇猛なる青の鎧は、暗い室内で、より暗く紺碧に染まっている。
本来ならばどこまでも華美な拵え。
救国の英雄にこそ、この鎧は相応しい。
猛々しいこの鎧を身にまとう英雄を目にした者はみな、
希望を胸に膨らませ、どれだけ幸薄き世だろうと光明を見出すだろう。
退魔のルーンが刻まれた剣もそうだ。
鏡面のように磨き上げられ、僅かの曇りも見せない。
怜悧なる輝きは正義の心を喚び覚ます。
どれだけ敵に打ち付けようと、刀身は刃毀れひとつ見せない。
あれは、オリハルコンだ。
ミスリルの白銀の輝きとは違う、やや鋼の色の強い輝き。
太古の鍛冶師が神に挑み、鍛え上げたものだといわれる、
王国に伝わる王者の剣。
だがそれらの輝きも、
身に纏う冷たさに染め上げられてしまっている。
伝説の英雄の姿を模した、
憎悪と絶望に疲れ果て、その全てを皮肉るような笑みを湛える、
勇者という女性の冷たさに。
怜悧な眼光と白銀の髪。
これは希望を捨てた眼だ。
擦り切れた神託の証とやらも、
神などものの役に立たぬ、と切り捨てているかのようだ。
戦士「…雷魔法以外も、使えたのか」
勇者「んー?んーん。使えないよ」
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