273: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/10/05(月) 03:28:24.75 ID:D2uU4S3W0
賢者「…私、パス。
分の悪い賭けはしないわ」
戦士「ここで考えあぐねてる方が分が悪いよ」
賢者「駄目よ。
死を先延ばしにするだけ、って考え方は正しいわ。
少しでも生きていれば、やれる事はあるんだから」
戦士「お前、どうせ死ぬなら今がいい、って、
さっきまで言ってたじゃねえか」
賢者「……………そーだけど」
戦士「そもそも、死ぬつもりはないんだ。
これは生きるためだよ。
俺を、上まで運べ。
足止めしてる間に、
…いい案、出してくれよな」
賢者は目を伏せ、
…そして、揺るがぬ眼差しでこちらを見直す。
魔女の話をしていた時もそうだ。
心が激しく動いた時の彼女は、
まるで涙をこらえるような素顔を見せる。
きっと本来の彼女が涙もろいせいだ。
彼女の生き方は、本来のその性質を、
悲しい鉄面皮で覆ってしまったのだ。
賢者「…死んだら、許さない。
私を生かしておいて、先に死ぬなんて、
…ありえないわ」
頭上の天蓋を睥睨する。
長い筒の先、まるで満月のような天井。
どのように地上フロアと通じているかは定かではないが、
少なくとも上にある事には違いない。
蛇のように壁を這う螺旋階段に欄干は無く、
そこで戦闘になれば、不利は、
身体が大きく得物の長いこちらなのか、
体重の軽い勇者なのかは、時至るまでわからないだろう。
しかし、遮蔽物の無い細い地形は、
雷魔法の前では、
距離が離れる事は即座に死を意味する事を充分に理解させた。
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