2: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/08/29(土) 19:55:11.08 ID:tNq3pxyB0
主観ではあるが、
この世にはどうしても変えられない事が3つある。
まず1つ。個人の都合で戦争は終わらない事。
11の時、私は生まれ育った小さな町を飛び出した。
故郷は、近くの森に棲む魔物たちの襲撃に苦しんでいた。
魔物の襲撃により月に一人死者が出た。
森から漏れだす瘴気に当てられ、月にまた一人死者が出た。
常に物資は不足していて、近くの町との小競り合いで、月にまた一人死者が出た。
故郷の民はみなどこかいじけて見えた。
青人草どもが口々に嘆こうとも、魔物は居なくならないし、
森を焼き払おうという勇者も現れない。
長く争った町と町が手を取り合う事は決してないし、
王国の助けも決して来ない。
みな戦う日々に疲れすぎたのだ。
戦いとは、状況に抗う事であると私は結論づける。
つまり故郷は戦う事を諦め状況に甘んじたに過ぎない。
月に3人の人柱は果たして本当に必要な犠牲なのか。
町民は5000人ほど。
決して多くはないが、決して少なくもない。
来月命を落とす事になる、その5000分の3に、家族だとか、恋人だとか、
大切な人が選ばれる可能性に、誰も目を向けない程度には。
ある日父が死んだ。
最後の家族だった。
私はそんな町に嫌気が差し、故郷を捨て魔法使いになるために魔法の王国へと向かった。
魔法使いになる事は私の夢だった。
魔法とは本来、人々の生活をほんの少し豊かにするためのものに過ぎないはずだった。
私が魔法の王国で学んだ事は、魔物を効率良く殲滅する方法だった。
それは学問の一分野として、国家試験や、学閥にまで食い込んでいた。
私は、魔物との争いが、青人草どもにとって、もはや欠かせないものになっている事を悟った。
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