魔女「ふふ。妻の鑑だろう?」
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19: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/08/29(土) 20:15:35.30 ID:tNq3pxyB0



突如、轟音が鳴り響く。
弾かれたように音のした方角を見やると、
大門の方角に黒煙が立ち上り、赤い光が夜空を照らしていた。
人の叫び声。
警報を知らせる鐘の音が、夜風に混じって微かに聞こえてくる。


戦士「襲撃かっ!!」

魔女「かなりの規模だ。
   あの光、魔力で編まれたものだが、
   学院の用いる術式じゃないな。…魔物の仕業だ」

戦士「俺は町へ行く。避難を手伝わないと。
   お前は、どこかに隠れててくれ」

魔女「…私も手伝うよ。
   ここには居られなくなるが、故郷が滅びゆくのは偲びない」


彼女が指を振ると、俺の足にほのかな緑色が浮かんだ。
足に風がまとわりついてくる。
身体が軽い。
吹いていた夜風が、俺の身体を避けるように流れるのがわかる。


魔女「旅をしていた折、たまさかシルフを手懐けてね。
   君の足に封じた。
   これで君は、風を踏むように走る事ができる」

戦士「…ありがとう。
   でも、できればお前には隠れててほしいんだ」

魔女「ふふ、夫がそう言うなら仕方ない。
   私は転移魔法で先に部屋に戻っているよ。研究室にいれば心配はない。
   君たちの手に負えないと判断したら、住民の避難くらいは手伝おう」

戦士「ああ。頼む。
   数区画をまわったら、装備を取りに俺も戻る」


言い終わるなり、町へと駆け出す。
彼女の言う通り風の精霊の加護は、まるで空気の壁を感じさせない。
…町は、魔物だらけだ。
遠くまた聞こえる轟音が、破られた防壁が一箇所だけではない事を知らせる。


戦士「聖堂へ避難しろ!動けない者が優先だ!男たちは武器を取って戦え!」


魔物たちはさして強くない。
この程度なら2刻もしないうちに鎮圧できる。
…だが、魔法を扱える魔物がいるという事は無視できない。
デーモン種。魔界の住人。
彼らはみな知性的、そして文明的であり、言語を解し魔法を扱い、
武装し、独特の美学まで持ち合わせている事もある。
年輪を重ねたドラゴンや、元が人間のバンパイアたちは魔法行使も可能だそうだが、
彼らは人間の前に滅多に姿を見せない。
魔法を扱い人間を襲撃する魔物は、ほぼ間違いなくデーモン種だと言っていい。

なら恐らくは、魔物たちはデーモンに率いられている。
何体いるかはわからないが、1体でも強敵だ。
少なくとも装備がなければ、太刀打ちできない。

まだ2区画しか回っていないが、随分と時間を取られた。
先に装備を取りに戻ろう。
大門はいずれ落ちる。
彼女を巻き込むわけにはいかない。






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