112: ◆DTYk0ojAZ4Op[saga]
2015/09/05(土) 01:27:56.72 ID:X+mP6cx90
しかしもはや打つ手はないはずだ。
賢者は壁に追いやられ、
俺は渾身の速度で、最後のひと突きを繰り出す。
連撃より倍の速度で走る刺突。
しかし賢者はその穂先をさばき、身体を軸に長柄を転がるように、
間合いを詰めてきた。
戦士「―――!?」
眼前に迫る直剣。
柄で紙一重で受け止める。
鍔迫り合いなら体格差で撥ね退けれるかと思ったが、
賢者の圧力は体格には不釣り合いなほど強い。
戦士「…肉体強化か、なんでもありだなテメェ」
賢者「………うふ、ふ。やっと捕まえた。
一方的に嬲られるのは趣味じゃないの」
鍔迫り合いが弾かれ、
斧槍を短く持ち替える。
間合いの利はもはやない。
糸を引くような直剣の軌跡が意識を惹きつける。
ミスリルの軽さ、精霊の加護、短く持ち替えた斧槍。
それだけの要素があっても、彼女の剣は更に疾い。
そう、疾い。
賢者の剣筋はただ疾いだけではなく、
袈裟懸けに走った剣は胴抜きへ、
左片手の平突きは瞬く間に右へと持ち変えられ、
果ては投擲かと思えば彼女は蛇のごとく剣に追いついた。
戦士「曲芸も、いい加減にッッ…!!!」
賢者「うふふ…武器を振るう者というのは、
考え方も似るものね」
賢者の身体に蜃気楼のような歪みが見える。
あれは風だ。
空気の層が重なって、光を歪めている。
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