514: ◆6QfWz14LJM[saga]
2017/06/23(金) 00:39:44.54 ID:QNuQC3ofO
「……さ、さっきぶりだね、先輩」
辛うじて答えてみせた彼女は、私以上に動揺を表出させている。
気取られない内に警戒を解き、私はエリナを手助けすることにした。
「……ちょうど、エリナがまだ話し足りないんじゃないかって思ってたところ」
「そ、そう……」
まだ疎らながら、往来のあるような場所で話し込むのは避けたい。
相手も暇ではないことだし、すぐ近くの壁が私の背になるよう、彼女を誘う。
「……あの、さ」
その間にエリナも落ち着いたのか、少しの逡巡を経て、漸く話を切り出した。
「先輩、やっぱり何か隠してない?」
彼女は、私への追及を諦めてはいなかった。
予想通り、と言えば聞こえはいいけど、その実、特に対策は考えついていない。
「気にし過ぎなだけかもしれないけど、どうしても引っかかっちゃって」
「……人を避けてるの、ナナさんだけじゃないよね」
自分の時間も捧げてでも引き止めたからには、既に確信めいたものが、エリナの中で渦巻いているのだろう。
私の真贋を見定めようと、見上げる瞳が入り込んでくる。
「気のせいなら、それでもいいから……何か、言って」
耳障りのいい嘘で丸め込もうと楽観的に思えるほど、彼女とは浅い関係でもない。
纏わりつく懇願と不安に押されて、私は口を開いた。
「……あるよ、隠し事」
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