237: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/29(金) 02:15:22.44 ID:mI3mcWABo
「――!」
不意に、無機質な冷たさが頬を伝う。
その方向に視線を向ければ、むくれ顔のエリナがいた。
「……先輩、話聞いてた?」
私に押し当てた缶ジュースを引き戻し、彼女は口を尖らせる。
「……ごめん、もう一回お願い」
「もう、せっかく礼までしたのにさ……"ブラッドアーツ"のアドバイス、ありがとうって言ったの」
演習の初回、エリナが見せたのは明らかに"ブラッドアーツ"に類するものだった。
彼女が言うには、以前第一部隊で出撃した任務の際、偶発的に発現したものらしい。
"だからこの演習で試してみようと思ったんだけど、凄く集中しないと出ないし、あの小ささじゃなぁ……"
"ねぇ先輩!何か、コツとかない?"
"えっと……参考にならないかもしれないけど、私が意識してるのは――"
"喚起"の"血の力"による、"ブラッドアーツ"の萌芽。
"血の力"の覚醒と同時に"ブラッドアーツ"を扱える"ブラッド"と違い、通常の神機使いはその発現に時間を要するようだ。
「神機が共鳴して振動したら、すぐ先端に意識を集中させる感じ……」
「前よりはずっとやりやすくなった気がするけど、難しいなぁ……」
私からの抽象的な助言を復唱し、缶を両手で掴んだエリナがむむむ、と唸る。
「今は私達がいるし、焦らなくてもいいよ」
「そういうわけにもいかないわ!今にもっと強くなって、"感応種"だって倒してみせるんだから!」
忙しなく右手を胸に当てたエリナは、尚も息巻いてみせた。
出会ってから今まで、紆余曲折あったけど、彼女のこの勝気さは変わらない。
「……そろそろ、私の指導も必要ないかな」
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