提督「劇をしたい」龍驤「あのさぁ、さっきからなんなの」
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204: ◆zqJl2dhSHw[sage saga]
2016/01/10(日) 22:33:40.47 ID:Vl0atwsQ0
――加賀――

瑞鶴に追い出されたが、遠くから射撃訓練場を見ていた。

加賀は追い出された理由を考えてみたが、おそらく瑞鶴にとって難度の高い指摘を続けてしまったためだと考えた。

これは仕方がないことだった。

瑞鶴は正規空母としてずば抜けた才覚を持っていた。

そんな後輩から稽古を付けて欲しいと言われ、さすがの加賀も気分も向上してしまう。

指導者はその時々の気分で態度を変えてはいけない。

これに関して加賀は十分に理解していたし、実行できていた。

むしろ、十分以上というより異常な程自分を律していた。

はっきりと思い出せるわけではない。

かつては皇国の空母機動部隊、その第一航空戦隊を支えてきた。

それは間違いなく世界最強であり、向かう所に敵はなかった。

輝かしい栄光。

そしてそれに匹敵する没落。

敗北、その一言で片付けられない程の惨敗だった。

英霊の神座についてからもその惨めさは忘れることはなかった。

どのような因果か再び常世に生を受けることができた。

あの時の後悔を繰り返さないために。

後輩にすべての負担を押し付けたことを繰り返さないために。

その一心で日々の鍛錬を積み上げてきた。

加賀「?」

瑞鶴は訓練機から本番用の機体に取り替えたようだった。

「流星改」

この鎮守府で加賀が愛用していた艦攻であり、熟練妖精揃いの飛行部隊だった。

加賀と苦楽を共にした飛行部隊と機体、これらは間違いなく彼女の宝だった。

そんな宝だからこそ、手放しがたい宝だからこそ、後輩の着任祝にふさわしかった。

赤城『加賀さんが渡してあげた方が、瑞鶴さんもきっと喜びますよ』

赤城に瑞鶴着任祝いを代わりに渡すよう依頼した時の返答だ。

それはむしろ逆だろう。

瑞鶴に訓練を付けることになるが、生半可なものになるはずがなかった。

嫌われることにもなるだろう。

しかし一航戦全部が嫌われる必要もない。

加賀『いえ、私は良い手本になれそうにないので』

この淡々とした言葉に、赤城は困った顔をしたことを思い出す。

その表情はいつか鳳翔が見せた表情と同じだった。

その時どんなことを指導されただろうか。

「言わなければ伝わらないこともある」だったろうか。

加賀「……よし」

瑞鶴は見事に的中させていた。

鳳翔の指導が的確だったためだろう。






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