134: ◆A0cfz0tVgA[sage saga]
2015/06/22(月) 00:16:35.09 ID:T93YvcF00
どうして父親は急な留学の理由を告げなかったのか。
今となっては、フランドールがそれを知る術はもう無い。
ただし、一つだけ言えることはある。
それは話を聞き終えた姉が、部屋から出て来た時に一瞬だけ見せた険しい表情。
そこから読み取ることができる事実。それは、その話は『決して良い話題では無かった』ということだ。
その時の記憶は、今でも彼女の記憶の片隅に残っている。
そしてその数日後、二人は父親の知人らしき男に連れられて英国を旅立ち、
遥か1万キロメートルの彼方にある極東の島国に降り立つことと相成った。
彼女達にとっては初めて踏みしめる異国の地。
文化、言語、街並み、そしてそこに住む人々……
自分達が住んでいた国と同じものなど殆ど無く、まさしく『異世界』と呼んでも過言ではない場所。
見聞でしか知らなかったその光景を実際に目の当たりにした時、
フランドールの異国に対する不安は風が煙を吹き飛ばすかのように霧散した。
何せ、目につくもの全てがある種の新鮮さを感じさせるものであり、
そして彼女の興味を強く引き付けるものばかりなのである。
あの小奇麗に振る舞っている姉ですらも隠しきれない『興味』の感情を顔に覗かせていたのだから、
天真爛漫な性格であるフランドールの心の内が、『憂慮』から『好奇心』へと傾くのは自然なことと言えた。
しかし異国の文化をじっくり堪能する間もなく、二人は自分達の留学先である『ある街』へ向かうことになる。
859Res/553.70 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20