235: ◆c4YEJo22yk[sage saga]
2016/04/13(水) 12:44:31.03 ID:isdK5suj0
「偶然、今日のお昼に買い物したばかりだったんです」
「それって……アロマキャンドルか?」
可憐が取り出したのは、透明なグラスに入ったアロマキャンドルだった。
「火を付けられるもの、何かありますか?」
「ああ、ちょっと待ってくれ」
俺が机からマッチを取り出して渡してやると、可憐は手早くキャンドルに火を灯した。
すると、ふんわりとした明かりが部屋を照らす。
「おおっ、結構明るいんだな」
「はいっ。……私、よく自宅でもアロマキャンドルを使っているんです」
彼女はそう言いながらソファに腰を下ろす。
俺もその隣りに座って、机の上でゆらめく火を見つめた。
「なんだか落ち着くなー」
「ろうそくの明かりって、リラックス効果があるらしいですよ」
「そうなのか? それに、すごくいい匂いもしてきた」
「はいっ……バニラの香りです。緊張をやわらげるって言われていますっ」
可憐はアロマテラピーが趣味というだけあって、知識も豊富みたいだ。
「ところで、せっかく買ったものをすぐに使わせちゃってすまないな。何か埋め合わせはするから」
「ええっ!? そんな、気を使って下さらなくていいんですよ……?」
「そうだなあ……新しいキャンドルを買ってプレゼントしようか?」
問いかけながら、横に座る可憐の方に顔を向ける。
すると、その時になって初めて、彼女との距離がとても近いことに気がついた。
肩と肩が触れそうなほどの距離で、普段ならこれほど密着することはない。
暗い中、ずっとキャンドルを見つめていたので気がつかなかったのだ。
可憐も少し遅れてこちらを向き、すぐ傍にいる俺と目が合うと、
「はわわっ……」
と焦ったような声を出してうつむいてしまった。
彼女の頬が赤くなっていくのが、薄暗い中でもはっきりと分かる。
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