471: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/12/30(土) 02:19:08.68 ID:HfYWLYgWO
――しかし、そんなに甘いはずはなかった。
顔に向かって鋭く飛んできた爪先を、辛うじてガードする。
それでも衝撃を抑えきれずに無様に床を転がり、その勢いのままジュウは跳び起きる。
咄嗟に反応できたのは、この道場に入ったときから、なんとなく予想していたから。
空手道場だというのに一枚も畳はなく、ところどころ割れている板張りの床や壁の隙間から除く、見るからに分厚い鉄板。
そして何よりも、ここはあの円堂円を育てた道場。
そしてこの武藤環という女性は、その師範代。
その環は、ほんの少しではあるが、驚いているようだった。
ガードされるとは思わなかったのか、それとも直ぐに臨戦態勢をとったその覚悟にか。
どちらにしろ、相手はまだジュウに油断している。
環に向かって無言で突貫。低い体勢から、脚を取りに行く。
しかし、環は足を引くことも、身体を開いて避けることもしなかった。
当然、そのままジュウの腕は環の大腿を抱え込み、そのまま引き倒そうとして――できなかった。
環は直立不動で、ジュウの渾身のタックルに堪えてみせたのだ。
愕然としながらしがみつくジュウを、環は脚だけで持ち上げてみせた。
床と水平になる位置まで持ち上げて、余裕の笑み。
「(化け物か、この女!?)」
次の瞬間、ジュウの身体は浮遊感に包まれた。
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