43: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2014/11/28(金) 01:32:51.26 ID:TLlppmv/O
そう思った真九郎は顔を上げようとするが、ぎゅむ、と上から押さえつけられてしまう。
「誰が顔を上げて良いと言ったの?」
幼馴染の女の子に頭を足蹴にされる経験も、なかなか無いだろう。
真九郎も、そんなことはあり得ないと思っていた、ついさっきまで。
しかし、こんな状態でも屈辱より恐怖が心の大半を占めている真九郎に、もはや為す術は無い。
事実を言えば、既に怒髪天の銀子の怒りはそれを超え、どうなってしまうかわからない。
それでも真九郎は覚悟を決め、拳を握り、口を開いた。
その時。
「真九郎! 遊びに来たぞ!」
真九郎の部屋の古びたドアが勢いよく開かれ、同時に快活な声が飛び込んでくる。
肩甲骨の辺りで揃えられた黒髪が、扉から吹き込んでくる風に靡き、鮮やかに輝く。
可愛らしくも美しい顔立ちが、声音と同じく楽しさを全面に押し出すように綻び、その笑顔はどんな人間が相手でも心を和ませてしまうだろう。
この少女の名は九鳳院紫。
自称、紅真九郎の婚約者である。
そして、少女は扉を開け放ったまま、その笑顔のまま固まった。
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