418: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/05/27(土) 21:01:26.79 ID:iQ7XYMi0O
真九郎にはそれが、夕乃が言葉を躊躇っているように見えた。
「崩月家当主なら、何か知っているんじゃないの?」
崩月夕乃は高校卒業を期に、正式に崩月法泉の跡を継いだ。
法泉は、廃業しているのだから継ぐだの継がないだのは関係ない、と言っていたが、裏の世界で未だに《崩月》の戦鬼の名は知れ渡っている。
そもそも真九郎が《崩月》の家の者であることは周知されており、そういう意味では裏の世界と完全に無関係とは言えないだろう。
夕乃は以前から当主代行として会合などに出席していて、正式に当主となった今であれば、真九郎などよりも多くの情報を持っているのは当然。
銀子に袖にされてからこの一週間、他の情報屋を当たってみた真九郎だったが、《星?》のような闇の深くまで踏み込もうとする者は多くなかった。
それならば、蛇の道は蛇、というわけだ。
「……確かに、いろいろと噂は聞きます」
「それなら――」
「真九郎さん、それは誰かに依頼されたことですか?」
夕乃の言葉に対して、真九郎は返答に窮した。
件の不良グループに関わったのはコンビニ店長の依頼によるものだった。
しかし、それに関しては既に報酬も受け取っており、終わったこと。
今調べていることは、完全に揉め事処理屋の仕事の範疇外なのだ。
咄嗟に口を開けない真九郎に対して、夕乃はこう言った。
「あなたはこの数年、揉め事処理屋としてたくさんの依頼を完遂してきました。結果としていろいろな事件を解決したり、未然に防いだことも十分承知しています。ですが、それらはあなたの、揉め事処理屋の本来の仕事の副産物でしかないことを、お忘れではないですか?」
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