414: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/05/27(土) 20:59:37.78 ID:iQ7XYMi0O
「ありがとう、ちーちゃん」
お茶を淹れてくれた散鶴にお礼を言うと、お盆に口元を隠して恥ずかしそうに笑う。
夕乃の笑顔とは別の意味で癒される笑顔に、真九郎もつられて笑う。
髪の毛をショートカットに整えた散鶴は見た目は活発だが、相変わらずの引っ込み思案らしい。
学校でも一人であることが多い、と通知表で担任教師に心配されていたが、母親である冥理は特に気にしていないようだった。
散鶴は紫とも仲が良く、たまに五月雨荘の真九郎の部屋に二人で訪ねてくることもあるほどだ。
お互いの性格は正反対のようにも見えるが二人は馬が合うようで、仲良く真九郎の食事を作ってくれたりもする。
散鶴は料理上手の母と姉の姿を生まれたころから見ているし、最初の頃こそ酷かった紫の料理も、まさに日進月歩で上手くなっている。
真九郎が湯呑を空にすると、すかさず散鶴がおかわりを注いでくれる。
お礼の代わりに頭をなでてやると、散鶴は猫のように真九郎に身体を寄せてくる。
夕乃はかつて、料理は幸せを作っているのと同じこと、と教えてくれたが、ならば誰かの為に料理を作ることもまた幸せの一つなのだろう。
幸せそうに笑う散鶴の頬を軽くつまんだりしながらじゃれていると、反対側の肩に軽い重み。
振り向くと、着替え終わった夕乃がそこにいた。
「真九郎さん、ずるいです」
「え?」
「最近、いいえ何年もずっと、ずーっと、私にはそんなにかまってくれないくせに、散鶴ばっかり」
肩を密着させてぐいぐいと押してくる夕乃。
「そんなことないよ」
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