柔沢ジュウ「雨か」 堕花雨「お呼びですか?」
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413: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2017/05/27(土) 20:59:05.41 ID:iQ7XYMi0O
井戸水を浴びる真九郎の横に立って、手ぬぐいと着替えを差し出してくるのは崩月散鶴。
夕乃の妹であり、真九郎にとっても妹のような存在だ。
生まれる以前からこの家にいた真九郎に対して、散鶴も兄のように慕ってくれている。
散鶴は紫より二歳年下の小学四年生。
ただし、散鶴の方が身体の成長は著しく、身長は紫とさほど変わらない。

「ちーちゃん、また背が伸びたね」

「うん。いつか、お兄ちゃんを追い抜いちゃうかも」

それは他人に対してのみの話で、家族にはこんな冗談も言える。
はにかむような笑顔に心を癒されながら着替えを済ませて居間に向かうと、師匠であり夕乃と散鶴の祖父である法泉が出迎えてくれた。

「よお、真九郎。稽古はどうだった」

「今日も厳しくしごかれました」

真九郎の返事に豪快に笑う法泉。
見た目はただの好々爺だが、崩月法泉といえばいまだに裏の世界で恐れられる豪傑。
《崩月》は法泉の代で裏家業からは廃業したものの、あの柔沢紅香や九鳳院の近衛隊にも対立を敬遠されるほどだ。
それほどの実力者のもとで、真九郎は八年間修業に明け暮れた。
八歳のとき真九郎は血の繋がった家族を全て喪い、その後柔沢紅香に命を救われ、崩月家に引き取られて修行の日々を過ごし、そして九鳳院紫と出会った。
未だに死んでしまった父と母や姉のことを思い出すこともあるが、家族のように接してくれるこの崩月家の人たちとの出会いも、真九郎にとってはかけがえのないもの。
こうして今でも親しくしてくれることにも、厳しく稽古をつけてくれることにも、感謝の念に堪えない。

「どうぞ」



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