343: ◆yyODYISLaQDh[sage]
2017/02/23(木) 20:57:42.64 ID:V014Qou/O
「いいと思うぞ。そういう格好も」
ジュウは気まずい沈黙が嫌で、思ったことをそのまま口にしてみた。
しかし、口にしてからなんとなく気恥ずかしくなり、ジュウは照れ隠しに前髪を乱暴に掻いた。
雨は何かを堪えるように唇を引き締めて、何も言わない。
再び流れる沈黙。
なぜこんなことになっているのか、ジュウにももはやわからなかった。
自分はただ、面倒な定期連絡を止めたかっただけだというのに。
しかし、その話を再開するためには、一度仕切り直さなければならないだろう。
ジュウは雨に座るように促し、お茶を淹れることにした。
〜〜
「ありがとうございます」
わざと時間をかけてお湯を沸かし、出来立てのお茶と適当な茶菓子を用意してやった。
そうして時間をかけたおかげか、湯呑に入った分のお茶を飲み干して幾分か落ち着いたのか、雨の頬の赤みは既に引いていた。
いつものように真っすぐジュウを見据えて淡々と話す様子に、ジュウは胸を撫で下ろした。
先程のような沈黙がいつまでも続くのは非常に居心地が悪い。
それも自分の家でとなれば尚更だ。
他所であれば自分が出て行けば済む話だが、自宅では撤退のしようがない。
雨と出会ったばかりの頃、髪の色を変えてまで逃げ回っていた自分を思い出して、ジュウは無意識に口元が緩んでいた。
そういえば、後にも先にも無抵抗で逃げ出した相手は初めてだった。
サイコパスな殺人鬼とも殴り合った、同級生には殺されかけて、裏家業の人間ともわずかながら相対した。
ジュウは、まるで人形のようにいつも通り自分の目の前にいる雨を見遣る。
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