302: ◆yyODYISLaQDh[saga]
2016/10/14(金) 22:22:46.28 ID:J8WJ1/+kO
威嚇か、それとも度胸試しかはわからないが、そう判断したからこそ、真九郎は一歩も動かなかったのだ。
「まあいいわ。…………報告を」
「はい。星?絶奈、斬島切彦、ともに異常なし。引き続き、こちらで監視します」
《星?》と《斬島》。
この両家は、裏十三家に数えられる一族である。
裏十三家とは、古来から続くこの国の闇――裏の世界を支配する存在だ。
《歪空》、《堕花》、《斬島》、《円堂》、《崩月》、《虚村》、《豪我》、《師水》、《戒園》、《御巫》、《病葉》、《亜城》、《星?》。
紫の生家である《九鳳院》家を含む表御三家と、真九郎が少年時代を過ごした《崩月》家を含む裏十三家。
これらの一族によって、表と裏からこの国は支配され続けて来た。
尤も、裏十三家の方は崩月家のように裏家業を廃業していたり、他では断絶している家もあるらしい。
そんな中、《星?》と《斬島》の両家は、つい最近まで裏世界で暗躍していた一族である。
そしておそらく、この少女もまた裏十三家に名を連ねる一族の一人。
「それにしても、《円堂》の人なのに、随分と好戦的なんですね」
「…………」
敢えて、挑発めいた言葉をぶつけてみるが、先程見せた動揺を自覚しているのらしく、グラスに波紋は見えない。
しかし、グラスを持つ指が強く握られているのを、真九郎は見逃さなかった。
言葉や格好は大人びていても、雰囲気やその精神は子どもであり、素人にも近い。
なぜ、こんな少女が連絡役に寄越されたのだろうか。
そもそも今までは電話や封書でのやり取りが多かったのに、今回は直接だ。
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