588: ◆S0mvz1PntgQY[saga]
2016/09/20(火) 04:39:07.76 ID:hFhRzfxk0
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モノクロームリリィ。憧憬の形を示せ、というなら、ボクにとっての答えは彼女たちだ。
伝説の……とまでは行かないが、ボクがプロジェクト:シンデレラガールズを知った切っ掛けのユニット。
当時は、自分があんな煌びやかな世界に並び立とうとするなんて、露ほども思っていなかったけれど。
二人がいなければ、ボクはこの運命の糸を手に取ることはなかっただろう。
何者でもなかったボクが、外界にボクを示すための『何か』をカタチにするために。
強く、強く輝く彼女たちに、ボクは憧れた。
ボクは、きっと彼女たちに追い付きたいんだ。
「ちょっと見たことがないくらいの気迫だね」
東郷さんは、モニターを見つめて息をついた。
「奏くんか、それともトライアドプリムスか。……はたまた、怪我か。何が彼女を、加蓮くんを変えたんだろうね?」
北条さんを評する内容は、息を呑んで言葉を継げないボクの心を代弁するようだった。
モニターの向こうからでも理解する。客席は静かで、エメラルドグリーンのライトの動きも大きくない。それは北条さんのパフォーマンスに圧倒されていることに他ならない。
「何の喩えも見つからない。これを、煌きと呼ぶんだね。……感服してるよ」
これまでボクが蓄えてきた語彙は、今のボクの心情を表すのに、何の役目も果たそうとはしない。
ただ、心のいちばん外側ににじみ出た、何の飾りもない言葉だけが、ボクの感情の波形を外界に示す。
乱れに乱れた波形。速水奏と北条加蓮の表現を目の当たりにした二宮飛鳥の、悔しくて、嬉しくて、楽しくて、苦しい、ぐちゃぐちゃになったこころのかたち。
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