561: ◆S0mvz1PntgQY[sage saga]
2016/08/16(火) 00:54:28.13 ID:Hnrzybny0
「でも、笑いますよ。私。……チャンスだもん、飛び込まなきゃ」
ほんの少し上擦った声。
……演技指導のレッスンで、こんなのやった気がする。不安なとき、緊張するとき、プレッシャーを感じているとき。
「笑うしか、ない、か」
ふと漏れた自分の呟きは、プレッシャーを処理し切れていないことが明確だった。
アタシたちは、向き合って顔を伏せたまま、しばらく黙り込んでいた。沈黙に寄り添うように、ゆるりと右手が解放され、自然、お互いに棒立ちになる。
が、棒立ちは一瞬で。
「……え。……え?」
急に、志保は両手でアタシの顔を挟んで、真正面に捉えてきた。
「アヤちゃん」
不意打ちに泡食ったアタシの顔に、ぐっ、と志保の顔が近づく。
「私、アヤちゃんに言ったよね」
少し垂れ気味の大きな目。いつもはよく笑う口は、次のことばに力を籠めるように引き絞られて。
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