560: ◆S0mvz1PntgQY[sage saga]
2016/08/16(火) 00:52:07.26 ID:Hnrzybny0
差し出されたその白い左手を見つめたまま、仕方なしに腰を上げ、手を伸ばす。瞬く間に指を絡め取られて、強く握られる。
「……志保」
少し低い体温とわずかな汗、それと小さな震えが、指を交わして繋がれた掌を通じて、アタシの右手に伝わる。
視線は所在なく、志保の短くて綺麗な爪に漫然と留め置かれる。
「……不安だし、緊張はしますよ。解ってます」
「うん」
アタシと志保は、だいたい同じくらいの背丈、視線の高さだ。今覗き込めば、どんな顔をしているかはわかる。
だけど、わずかに動く志保の指先から視線を移すことは、しない。
だって、アタシたちは。
「だって、私たちは。同じじゃないですか」
そう、同じだから。どんな顔してるかなんて見なくてもわかる。そんなに見られて嬉しくはない顔だ。
だから、あんなに笑って、あんなに楽しそうに見せて、あんなに空回りして。自分を、鼓舞するんだ。
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