忍「隠し事、しちゃってましたね……」 アリス「……シノ」
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169: ◆jOsNS7W.Ovhu[saga]
2013/11/11(月) 01:55:06.25 ID:S2zVCSa60
「――いきなり、あんな」


 大胆なこと、と言い終わる前に、近くに体温を感じた。


「落ち着いて下さい、アリス」
「……シノのせいで、全く落ち着けないよ」


 今朝方と同じように抱きしめられ、アリスは顔を赤らめながら訴えた。
 そんな彼女を、忍は愛おしそうに撫でた。


「私、アリスと会えて、本当に良かったです」
「わ、私も、だけど……」


 アリスはふと、今朝の風景を思い返してしまった。
 あの時の、大宮勇の言葉。


 ――少し、考えないといけないわね――


 こう呟いた勇は、どこか困ったように、それでいてとても愛しそうだった。


「――シノは」
「はい?」
「シノは……本当に」


 アリスはそこで、ギュッと抱きしめ返しながら、


「女の子じゃ、ないんだよね……?」


 おかしなことを言ってしまった、と思う。
 今まで、何度も見てきたではないか。
 平坦な胸、そこへの詰め物、そしてそして――

 数え上げればキリがないそんな確かな根拠を
 しかしアリスはどこかで認めるのを拒んでしまっていたように思う。

 だって――
 今、自分を撫で回す手のひらは、こんなに綺麗で、男性特有の無骨さなど全くない。
 その端正さは、女性の自分から見ても嫉妬しまうほどに完成されている。

 それに、髪だってそうだ。
 忍はよく、自分の髪を撫でては称賛する。
 けれど、忍自身の髪も、女性が自信を無くしてしまうくらい整っていることも、アリスはよく知っていた。


 アリスは――おそらく、カレンも――恐れていた。

 大宮忍は、男性である。
 
 この確かな事実を認めることを、自分はどこかで拒んでいる。


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