らき☆すたSSスレ 〜そろそろ二期の噂はでないのかね〜
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676:母の夢の戻り道 9/10[sage saga]
2018/12/04(火) 01:51:59.71 ID:tkcstJKX0

 おかあさんの理想は、きっとみゆきさんのようなひとだったんじゃないかって。教室に着いた朝から、ずっと考えてた。
 べつに、自分のことを嫌いになったとか、こんなふうに育ってしまって、母親に申し訳ないと思っているとか、そういうことじゃない。
 ただ、みゆきさんが、おかあさんの娘だったなら。そんな想像が、今日はずっとぽわぽわわいておさまらないだけの話しで。
 なんだか今日は、そんな不安定な気分だったんだと、わたしは自嘲する。

 そんなわたしに向かって、みゆきさんは。

「わたしは、泉さんになりたいって、いつも思っているのに」

 ふしぎな気持ちですね。なんて、彼女は続ける。

「なんでまた、わたしなんか」
「泉さんだって、なんでまた、わたしなんか、ですよ?」

 困ったように、首をかしげて。
 
「わたしも、泉さんに、なりたいです」

 けれど彼女は、そう、断言するから始末が悪い。

「明るくて、やさしくて、主体的に行動する意志の強さがあって」
「待って待って待ってほめるのやめて」

 恥ずかしいし割と見当違いな過大評価だし。

「だって。泉さんが私になりたいというのは、わたしをうらやんでいるのではなくて、おかあさんを想うやさしさから来ているだけですけれど」
 だけ、という言い方は失礼だったでしょうか、と前置きしながらも。そっと自分の胸に手を置いて、瞑目しながら。

「わたしが泉さんになりたい、と思うのは、わたしが泉さんをうらやんで、尊敬しているからです」

 顔を上げて、その視線と言葉は、わたしの心の真ん中を、まっすぐに打ち抜いて。

「そんなふうに尊敬される泉さんに育ったことを、お母様が喜ばないはずがないと、わたしは思います」

 だなんて。わたしが尊敬するみゆきさんは微笑みかけるものだから。
 こみ上げてくる何かに、涙腺を刺激してくる何かに、耐え切れそうになかったから。

 おかあさんに甘えるように、みゆきさんの袖をぎゅっとつかんで彼女を引きよせておでこをあずけて。
 ちょっとだけ、彼女にわたしの顔を見られないようにしたんだ。

 わたしの髪を撫でるてのひらは、夢のなかのおかあさんのように、とってもあたたかった。




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