彼女「一生、一緒だよ。君の事、死ぬまでずっと大好きだからね」 【ヤンデレ注意】

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46 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:33:21.15 ID:HQbz6KG9o
【帰宅後。自宅。午後5時】


prrrr prrrr


『あ、もしもし』

『ごめんね。もう家に帰ってるよね?』

『え、そうなの? さっき、着いたんだ。結構遅かったんだね』

『あー、先輩と一緒にお昼食べてきたんだ。混んでて遅くなっちゃったんだね』

『私の方? うん、それなんだけど……』

『ちょっと今、友達の相談にのってて……。それが長引きそうなの。だから、帰りが遅くなっちゃうかもしれないんだ』

『本当に悪いんだけど、今日は晩御飯の仕度が出来ないかも』

『うん。代わりに何かお弁当を買っていくね。何がいい?』

『え? そう? 自分で作るの?』

『本当に? 私の分も作ってくれるの?』

『うん。助かるよ。ありがとうね』

『うん。じゃあまた。遅くても8時までには帰るようにするから』

『じゃあね』


ツー……ツー……

 
47 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:34:23.78 ID:HQbz6KG9o
【午後7時半】


彼女「ただいまー。ごめんね、遅くなって」

彼女「うん、そう。雨もちょっと降ってきた。おかげで少し濡れちゃった」

彼女「あ、タオル用意しておいてくれたんだ。ありがとう」

彼女「ううん。着替えまでは流石にいいよ。大丈夫。ホントにありがとうね」

彼女「じゃあ、ちょっと遅いけど、シャワー浴びるついでに今から洗濯しちゃうね。君のも出しておいてくれる? 一緒に洗っちゃうから」

彼女「あ、そうなんだ。もう出しておいてくれたんだ。あとはボタンを押すだけなんだね。ありがとう。ご飯も作ってもらっちゃったし、なんか今日は至れり尽くせりだね」

彼女「普段の逆? あ、そうだね。本当にそうかも」

彼女「そっかぁ。という事は、これが普段、君が私に思ってる気持ちなんだね」

彼女「悪いなあって思う気持ちと、嬉しいなあって思う気持ちの両方が混ざってる」

彼女「君もそう? そうなんだ、ふふ」
48 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:35:26.42 ID:HQbz6KG9o
【食事】


彼女「なんか、久しぶりだね。こうして二人で一緒に晩御飯を食べるのって」

彼女「そう、久しぶりなんだから。一週間ぶりは久しぶりなの」

彼女「しかも、今日は君の手料理なんだよ。これは二週間ぶりでしょ?」

彼女「ううん、そんな事ないよ。私が作るのよりも美味しいぐらい」

彼女「だって私は、君の味が好きだから」

彼女「君の気持ちが一杯詰まってる気がするもの」

彼女「それにこれ。カボチャの煮っころがし。私がカボチャ好きだからでしょ? 毎回カボチャ料理を作ってくれるのって」

彼女「わかるよ。君はそんなにカボチャが好きじゃないのに、いつも作ってくれるんだから」

彼女「そういうとこ、私は大好き。君を好きになって良かったなあっていつも思う」

彼女「あ、顔赤くしてる。照れてるの? 可愛いなあ、もう」

彼女「そういう可愛いとこも、大好きだよ」

彼女「ふふ。そう。いつもからかわれてるから、そのお返し。たまにはやり返しちゃうんだからね」
49 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:36:30.46 ID:HQbz6KG9o
彼女「あ、照れ隠しなの? 急に話題変えて」

彼女「そうそう。いつも私が言われてる事。だから、そのお返しを今日はまとめてしてるの」

彼女「うんうん、わかった。降参ね。じゃあ、仕方ないなあ。からかうのはやめてあげる」

彼女「それで、友達の事だったよね。うん、そう。2時間ぐらい悩み相談を受けてたの」

彼女「今、転職しようか悩んでるんだって。上司の人が典型的なセクハラ気質の人で、やめてって言ってるのに全然やめないらしいから」

彼女「そんなに大きくない会社だから、上の人に話しても、あまり取り合ってくれないらしくて」

彼女「ね、最低だよね。そんな事するなんて。話を聞いてただけでも腹が立ってきちゃって」
50 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:37:37.90 ID:HQbz6KG9o
彼女「だから私、転職するより、相談センターとかに電話した方がいいって言ったの」

彼女「でも、ゴタゴタしそうだからって、あまり乗り気じゃなくて。その気持ちもわかるけどさ」

彼女「でも、間違ってる事をしてるのは向こうなんだよ。何一つ間違った事をしてないこっちが我慢するのっておかしいよね。君もそう思うでしょ?」

彼女「うん。そうだよね。もし辞めるとしたら、向こうの上司が辞めるべきだよね。それが当たり前だと私も思う」

彼女「だから私もそうやって説得してみたんだけど、でも、その後の事とか考えるとなかなか友達も踏ん切りがつかないみたいで……。結局、もう少し考えてみるって……」

彼女「なんか、私まで疲れちゃってね。可哀想だなって思うし、力になれたらって思うんだけど、私じゃどうにも出来ないから……」
51 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:38:56.77 ID:HQbz6KG9o
彼女「うん。大丈夫。精神的な疲れだから、一晩寝れば良くなると思う」

彼女「悪いけど、今日はちょっと早目に寝るね。ごめんね」

彼女「うん。ありがとう。でも、そこまで気を遣わなくても大丈夫だから。平気」

彼女「それよりも、私は君の方が心配だよ。君こそ最近疲れた顔をしてる事が多いから」

彼女「うん。大きな仕事を任されて張り切ってるのはわかってる。しっかりやりたいから、一杯残業してるのも知ってる。でもね」

彼女「なんだか仕事以外でも心配事があるんじゃないかなって思って」

彼女「最近の君、ちょっと感じが前とは違うから。何か落ち着かない感じだし」

彼女「そんな事ない? 私の気のせいかな……。だったら、いいんだけど……」

彼女「でも、約束してね。もし何か悩み事とか困った事とかがあったら、隠さずに全部私に話してね。君の力になりたいから」

彼女「もちろん私じゃ力になれない事もあるかもしれないよ。でも、それでも話してね」

彼女「だって、私は君の恋人なんだから」

彼女「楽しい事も辛い事も、幸せな事も嫌な事も、二人で一緒に分け合いたいの。どんな事でも全部」

彼女「だから、約束だよ」

彼女「うん。必ず守ってね」



彼女「……知ってるよ。私も君の事好き。愛してる」

彼女「ね。ちょっとだけでいいからギュッってして。今、したくなっちゃったから」



彼女「……うん。心地良いよ。君の腕の中、とても温かくて好き……」
52 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:40:01.37 ID:HQbz6KG9o
彼女「ごめんね。食事中にいきなり」

彼女「うん。満足した。おかげで今日はぐっすり眠れそう」



彼女「うん、そう。私にとっては、君が心の栄養剤なの。だから元気になれたよ」

彼女「そうそう。翼をもらうの。だって体がすっごく軽くなるんだから」

彼女「本当だよ。嘘じゃないもん。今なら飛べるかもしれないよ」

彼女「なんてね。それは流石に無理。本当に空を飛べたらきっと楽しいんだろうけどね」

彼女「そう? 気持ち良さそうだけど。あと、通勤がスゴい楽になるね。バスとかいつも満員で嫌になるんだから」

彼女「今日行ったモールも人がいっぱいだったし、それも疲れた原因かもしれないなあ。人混みの中ってなんだか疲れるもんね」
53 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:41:06.89 ID:HQbz6KG9o
彼女「そういえば、君の方はどうだったの? 映画、楽しんできた?」



彼女「?」

彼女「あんまり面白くなかったの?」

彼女「まあまあ、だったんだ。話題作とか聞いたけど……」

彼女「でも、あんまりだったんだ。珍しいね」

彼女「あ、待って、わかった。職場の先輩と行ったからじゃないの? 君、色々と気を遣っちゃうタイプだもんね。だから楽しめなかったんじゃない?」

彼女「あ、やっぱりそうなんだ。その先輩、少し苦手な人だったんだね。でも、お昼御飯も一緒だったし、送り迎えもしなきゃだったから、大変だったんだね」

彼女「うん、そうだね。会社の先輩だから、印象悪くしたくないもんね。だから、頑張ったんだよね。誉めてあげる。なでなで」

彼女「もう、照れなくてもいいって。ほらほら、大人しくお姉さんになでなでされてなさい。なーんてね。ふふ」
54 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:42:13.72 ID:HQbz6KG9o
彼女「それで、お昼御飯はどこに行ったの? そっちは大丈夫だった?」

彼女「あ、そうなんだ。途中で見つけた定食屋さんに入ったんだ。でも、そっちもあんまり美味しくなかったんだね」

彼女「なんて名前のお店だったの?」

彼女「忘れちゃったんだ。そうだね、美味しくなかったなら覚えてないよね、そういうのって」

彼女「それで、何を頼んだの?」

彼女「何とか定食? なにそれ」

彼女「あー、揚げ物とかが色々入ってるやつだったんだ。でも、美味しくなかったんだね。油とか揚げ方が良くないのかな?」

彼女「そうだよね。初めて行くとこってチェーン店以外は味がわかんないもんね。当たり外れ大きいと思う」

彼女「でも、我慢して美味しそうに食べたんだ。偉い偉い。もう一回なでなでしてあげようか?」

彼女「うん。いつもされてる方だから、逆に君にするのが楽しくなっちゃって」

彼女「変なスイッチ入っちゃったかもしれない。楽しい」
55 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:43:16.86 ID:HQbz6KG9o
prrrr prrrr


彼女「あ、電話鳴ってるよ。君のじゃない?」

彼女「あ、でも、すぐに切れちゃったね」

彼女「誰からだったの?」



彼女「?」

彼女「どうしたの? なんか焦ったような顔してたけど」



彼女「あ、会社の人からだったんだ。でも、こんな時間にかけてくるなんて変だよね。何だったんだろ」

彼女「かけ直してみたら? 大事な用件かもしれないし」

彼女「?」

彼女「しなくていいの? 大丈夫?」

彼女「あ、メール来てたんだ。かけ間違いだって。それなら大丈夫だね」
56 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:44:20.15 ID:HQbz6KG9o
【食事後】


彼女「?」

彼女「どうしたの? また着替えて」

彼女「え、今から買い物に行くの? どこに?」

彼女「コンビニ? なんだか急だね。何か買っておかなきゃいけない物でもあるの?」

彼女「アイス? ああ、急に食べたくなっちゃったんだ。あるよね、たまに。そういう事」

彼女「じゃあ、私も一緒に行く。私も食べたくなっちゃったし」



彼女「え、あ、うん……。確かにちょっと疲れてるけど……」

彼女「そう? うん、わかった。じゃあ、待ってるね」

彼女「行ってらっしゃい」
57 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:45:25.09 ID:goybu0ino
【コンビニの駐車場。電話中】


『ホントすみません、先輩!』

『でも、急ぎだったんで。どうしても今、確認して欲しい事があって』

『車の中に私のヘアピン落ちてませんでしたか? 一個なくて。それさっき気付いて。もしかしたら車の中に落としたかもって、だから慌てて先輩に電話して』

『座席の下とか、落ちてなかったですか? 小さい物なんで先輩も見落としてるかもって。だから』

『はい。ホントごめんなさい!』

『…………』

『あ、なかったんですね! 良かったあ……』

『そうなんです。ヘアピンなんか失くしたってどうでもいいんですけど、先輩の車の中に落ちてたら絶対ヤバイって思って……』

『ごめんなさい。ホントごめんなさい。明日、メッチャ怒って下さい。ホントバカなんです、私。先輩にあれだけ気を付けてって言ったのに、自分がこんな事やらかすなんて』

『はい。スミマセンでした、先輩。はい。この履歴も消しといて下さい。はい』

『本当にごめんなさい。失礼します』


ツー…ツー…

 
58 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:46:31.73 ID:vMEzShbzo
【自宅】


彼女「あ、おかえり。先にもうお布団敷いといたからね」

彼女「うん。今日は早目に寝るつもり。アイスを食べたらもうお布団に入っちゃうから」

彼女「ホントは寝る前にこういう甘い物食べると太っちゃうから駄目なんだけど、でも、誘惑に負けちゃうんだよね。駄目なんだけど」

彼女「いただきます」

彼女「うん。美味しい。余は満足じゃ」

彼女「あ、君のはモナカなんだ。モナカも美味しいよね。ね、一口ちょうだい」

彼女「うん。私のも一口あげる」

彼女「あ、やっぱりこっちも美味しいなあ。たまに食べるアイスって本当に美味しいよね。不思議」

彼女「じゃあ、次は君の番だね。はい、あーんして」
59 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:47:41.46 ID:vMEzShbzo
彼女「ごちそうさまでした」

彼女「それじゃあ、私はもう寝るね。お休み」

彼女「うん。君もあんまり夜更しは駄目だよ。明日は仕事なんだから」



彼女「あ、そういえばさ」

彼女「さっき、電話かけてきた人って会社の誰なの?」

彼女「初めて見る名前だったから気になっちゃって」
60 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:48:15.70 ID:vMEzShbzo
彼女「うん。チラッとだけ画面が見えたの」

彼女「確か■■さんだよね」

彼女「そんな人、君の会社にいたかなって。一度も聞いた事ない名前だったから」

彼女「どんな人なの? 君とはどういう関係なのかな?」
61 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:49:19.50 ID:vMEzShbzo
彼女「あ、そうなんだ。取引先の人なんだ」

彼女「でも、さっき会社の人って言ってなかった?」

彼女「あれはどういう事なの?」

彼女「あ、そっか。会社関係の人って意味で会社の人って言ったんだね。私の早とちりなんだ、ごめんね」

彼女「それで、なんて名前の取引先なの?」

彼女「☆☆会社の人なんだ。担当の人、変わったの? 前は△△さんだったよね」

彼女「うん。私、記憶力いいから。ちゃんと覚えてるよ」

彼女「それで、△△さんはどうしたの? やっぱり担当が変わっちゃったの?」

彼女「あ、そうなんだ。今は二人でやってるんだね。で、さっきの電話の人は新人さんなんだ」

彼女「教えながら一緒にやってる感じなんだね。そっか。でも、■■さんって、ちょっとドジかもね。間違って電話かけちゃうなんて」

彼女「どんな人? やっぱり若いの?」

彼女「そうだよね、若いよね。顔はどうだった? 格好良かった?」

彼女「え、ううん、別にその人の事を気にしてる訳じゃないけど……」

彼女「あ、もしかして嫉妬してくれてるの? 他の男の人の事を私が訊くもんだから」

彼女「うんうん、わかった。ごめんね。そうだよね、嫌だよね。もう聞かないから安心して」

彼女「大丈夫だよ。私は、君の事しか見てないから」

彼女「だから、心配なんてしないで」



彼女「ずっと君だけの私でいるからね」
62 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:50:27.50 ID:vMEzShbzo














 
63 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/03/23(土) 11:50:59.63 ID:vMEzShbzo
今日はここまで
64 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:21:48.93 ID:Ah8NPmwmo
【あの日、2時間前 会社 残業中】


女後輩「せーんぱい」ムギュッ

女後輩「あ、ビックリしました? スゴいビクってなってましたよ」

女後輩「流石、先輩。いい反応してくれますね。こちらもやり甲斐があります」

女後輩「だーいじょうぶですって。誰も見てませんよ。こんな時間まで残ってるの、先輩ぐらいですから」

女後輩「え、ああ、そっちの方ですか。大丈夫です。気にしないで下さい。単なるスキンシップですから」

女後輩「ううん、スキンシップですよ。ちょっと抱きつくぐらいフツーです。特別じゃないですよ」

女後輩「先輩、ドキドキしちゃいました? ダメですよ。先輩には彼女さんがいるんですから。私にドキドキしてたら浮気になっちゃいますよ」
65 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:22:51.77 ID:Ah8NPmwmo
女後輩「まあ確かに。こんな可愛い子に後ろから抱きつかれたらドキドキしちゃうのも無理ないかもですね」

女後輩「でもそれは先輩が悪いんですよ。私のせいじゃないですからね」

女後輩「だって、ずっと電話待ってるのに、一回もかけてきてくれないんですから。そんなの淋しくなっちゃうじゃないですか」

女後輩「だからです。放置は良くないですよ、先輩。猫だって遊んで欲しい時は構って構ってってアピールするじゃないですか。それと同じです」

女後輩「一週間以上待って何もなかったんで、こっちから催促に来たんです。今度、飲みに行きましょうよ、せーんぱい」

女後輩「今週の金曜日とかどうです? 仕事終わりに行きましょうよ。二人で」

女後輩「もちろん今度は私が奢りますから。ね? 行きましょーよ、先輩」
66 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:24:06.83 ID:Ah8NPmwmo
女後輩「ダメです。他の人とは嫌です。私は先輩と行きたいんですから」

女後輩「ほら、見て下さい、ここ。先輩と飲みに行きたいスイッチが入っちゃってるでしょ? だから、しょーがないんですよ」

女後輩「ううん、あるんです。そういうスイッチが。先輩には見えないだけで。しっかり入っちゃってるんですよ」

女後輩「だから先輩、私のこのスイッチをどうにかして下さい。そうでないと、ずっと言い続けますからね」

女後輩「それか、水族館でもいいですよ。そっちも行きたいですから。今度の土曜か日曜に一緒に行くって約束してくれるなら、飲みは我慢します」

女後輩「あ、そうだ。先輩さえ良ければ、私の家で宅飲みとかでもいいですよ。私、一人暮らしなんで。ちょっと狭いですけど、先輩と私の二人だけなら全然平気ですし」

女後輩「ねえ、どれがいいですか、先輩? 好きなの選んで下さい。先に言っておきますけど、選ばないってのはナシですからね」

女後輩「もし選ばないとか先輩が言っちゃうならー」

女後輩「私、うっかり口が滑っちゃうかもですね。この前の事」

女後輩「冗談ですよ、冗談。そんな深刻な顔しないで下さいってば」

女後輩「言ったら、もう先輩と遊びづらくなっちゃうじゃないですか。だから、言いませんってば。ホントですよ」

女後輩「それで、どうします、先輩? どのプランがいいですか? 私のオススメは、私の家で宅飲みですけど。一番安上がりですから」
67 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:25:01.81 ID:B2FIFaHlo
女後輩「はい。じゃあ、金曜日に居酒屋で。どっか会社から離れたとこがいいですよね。良さげなところ探しときます」

女後輩「でも、先輩。ホントに私の家でも良かったんですよ。そしたら映画とかも一緒に見れますから」

女後輩「まあ、映画館と違って画面はちっちゃいですけどね。でも、気兼ねなく見れますし、好きな時に止めたり巻き戻したりも出来ますし」

女後輩「だから、この次はそうしましょうね、先輩。私の家で映画見ましょう。ゲームとかでもいいですよ。私、Switch持ってるんで」

女後輩「ダメ? 何でですか? 私の家だったら人目につかないから、先輩も安心出来るじゃないですか。先輩の車に乗るのはこの前の件で懲りましたし」

女後輩「あ、それは大丈夫です。先輩を家に呼ぶのに抵抗とかはないですよ。他の男の人ならダメですけど、先輩はオッケーですから」

女後輩「だって先輩、彼女さんがいるじゃないですか」

女後輩「私に手を出したりとかしないでしょ? だからオッケーなんです」

女後輩「まあ、先輩なら手を出されてもいいですけどね。それも理由の一つですし」
68 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:26:08.53 ID:+uvvIi69o
女後輩「あ、それじゃ、私はこれで帰りますね。あんまり長くお仕事のジャマする訳にもいかないんで」

女後輩「でも、先輩。あまり無理しないで下さいね。今日中に終わらせないといけない仕事じゃないなら、明日やればいいんですからね」

女後輩「そうですよ。先輩ときたら、放っておいたらずっと一人で仕事してますし。無理しすぎなんです。いくら大きな仕事を任されたからって、それで体を壊したら元も子もないですからね。ホント無理はしないで下さいよ」

女後輩「はい。そうですね。それがいいと思います。あ、でもそれなら途中まで一緒に帰ります? もう少しで終わるなら、私、待ってますよ」

女後輩「それはダメですか……残念。まあ、誰が見てるかわかりませんから仕方ないですね。今日は素直に諦めます」

女後輩「それじゃ、お先です、先輩。金曜日の飲み、楽しみにしてますね」



女後輩「?」

女後輩「なんですか、先輩。一つだけ聞きたい事って」

女後輩「ああ、さっきのですか。先輩なら手を出してもいいですよってやつですね」

女後輩「もちろん冗談ですよ、せーんぱい。ダメですからね」

女後輩「もし手を出すなら、彼女さんと別れてからにして下さい。それならオッケーですから」

女後輩「それじゃあです、先輩」

女後輩「もし彼女さんと別れたら、私と付き合って下さいねー。私、待ってますからねー」
69 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:26:47.65 ID:mMdJ5/yxo














 
70 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:27:58.61 ID:DOmX2dfNo
【自宅】


彼女「お帰りなさい。今日はいつもより早かったんだね。良かったあ」

彼女「あ、スーツもらうね。鞄も」

彼女「え? ああ、この指の包帯? うん、ちょっとね」

彼女「料理してる時に考え事してて、それで……。ドジっちゃったの。薬指と小指切っちゃって」

彼女「うん。大丈夫だよ。大した怪我じゃないから。ちょっとまだ痛いけど、でも全然平気だし」

彼女「うん。気をつける。心配してくれてありがとう」

彼女「いつも通り、お風呂は後でいいよね。それなら先に着替えてきて。その間にご飯用意しておくから」
71 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:28:43.55 ID:rTzku9uVo
彼女「はい、どうぞ。温めておいたよ」

彼女「そう。今日は君の好きなビーフシチューなの」

彼女「それにほら、ビールも用意しておいたよ。飲むでしょ?」

彼女「ああ、そのボウル? そう、氷を入れてビールを冷やしておいたの。お祭りの屋台とかの真似だよ。あれ、すっごい冷えてて美味しいでしょ。だから」

彼女「うん。今日はちょっとサービス。君に喜んで欲しくって」

彼女「そう? 嬉しい? なら、良かった。私も嬉しいよ」
72 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:29:16.99 ID:9s1Ck5z+o
彼女「じゃあ、早速召し上がれ」

彼女「って言いたいところだけど」

彼女「その前にちょっとだけ待ってね」

彼女「うん。ご飯はちょっとだけお預け」

彼女「食べる前に、君に聞きたい事があるから」



彼女「私に、何か言う事はない?」


 
73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:29:54.88 ID:9s1Ck5z+o
彼女「髪を切った? ううん、違うよ」

彼女「何かの記念日? ううん、違うよ」

彼女「私の事が好き? うん、知ってるよ。でも、それじゃないよ」

彼女「……わからない? そうなんだ。わからないんだ」



彼女「本当に、私に何か言う事は思いつかないの?」

彼女「心当たりとか、一切ない?」

彼女「本当に?」


 
74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:30:47.19 ID:9s1Ck5z+o
彼女「…………」

彼女「そうなんだ……。本当に思いつかないんだ」

彼女「それなら仕方ないね……」



彼女「君が思いつかないなら、私の方から訊くけど」

彼女「この前、君が会社の先輩と映画を見に行った日の事、覚えてるよね?」

彼女「あの時、私のお父さんが偶然君を見かけたんだって」

彼女「今日、その事を電話で教えてくれたんだけど」

彼女「▲▲っていうラーメン屋さんの列に、若い女と二人で並んでいたって言ってたよ」

彼女「楽しそうに話しながら、ね」



彼女「一緒にいた、若い女って誰?」

彼女「君、男の先輩と出かけたって言ったよね?」

彼女「何でその女が君と二人だけで一緒にいたの?」
75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:31:48.79 ID:9s1Ck5z+o
彼女「へえ。そうなんだ。その女は先輩の恋人なんだ」

彼女「それで、その女だけ後から合流したんだね」

彼女「じゃあ何でその女と二人だけだったの?」

彼女「先輩はどこに行ったの?」




彼女「その時は先輩に用事があって、少し離れたところで電話してたんだ。へえ」

彼女「だから、君と二人だけに見えたんだ。それで、先輩も後から合流したんだね」



彼女「じゃあ訊くけど、その女の名前は何ていうの?」

彼女「まさか、知らない訳ないよね? 自己紹介ぐらいしたでしょ」

彼女「何ていう名前なの?」
76 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:32:41.69 ID:9s1Ck5z+o
彼女「そうなんだ、★★って名前なんだ」

彼女「それ、嘘だよね」

彼女「あの女の名前は●●でしょ」

彼女「君の会社の後輩だよね」

彼女「先輩も初めからいなかったよね。あの女と二人で店に入って、二人で店から出てきたんだよね」

彼女「どうしてそんな嘘つくの。答えて」



彼女「へえ。本当の事を言ったら、私が誤解して傷つくんじゃないかと思って、だから嘘をついたんだ」

彼女「つまり、私を気遣って嘘をついたって事だよね」

彼女「そうだよね、君が嘘をつく理由なんてそれしかないもんね」

彼女「でも、何でそれを話してくれなかったの? 前に私と約束した事あるよね?」

彼女「悩み事や困った事があったら、隠さずに相談するって。君、あの女と二人でいて悩んだり困ったりしなかったの?」

彼女「したよね。なら、何で私に話さなかったの?」

彼女「君、私との約束を破ったってわかってる?」

彼女「良くないよね、それは。例え私を気遣っての事だったとしても」

彼女「良くないよね?」
77 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:33:26.47 ID:9s1Ck5z+o
彼女「そうだよね。良くないって自覚はあるよね」

彼女「え? 何?」

彼女「何であの女の名前を知ってるのか知りたいの?」

彼女「お父さんがスマホで撮った写真を送ってくれたからだけど?」

彼女「君の会社の知り合いなら、私、顔と名前を全員覚えてるから」

彼女「彼女として、それぐらい当たり前の事だよね」

彼女「君に変なゴミ虫が寄ってきたら嫌だし。だから、覚えてるよ」

彼女「それがどうかしたの?」
78 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:34:13.02 ID:9s1Ck5z+o
彼女「それで、君はまだ説明をしてないよね」

彼女「何であの女と二人だけでラーメン屋に入ったの?」

彼女「答えて」



彼女「へえ。そうなんだ。本当は先輩との予定だったんだけど、先輩が急に来られなくなって代わりにあの女が来たんだ」

彼女「その後、ムリヤリご飯に誘われて、それを断れなかったの」

彼女「そう。それで?」

彼女「他には?」

彼女「ないの? それ以外はあの女と一緒じゃなかったんだ?」

彼女「へえ」



彼女「君、公園のベンチでクレープも一緒に食べてたの、忘れたの?」

彼女「二人で並んで座って。かなり近い距離で」

彼女「あれは?」
79 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:35:45.79 ID:dylUY7u6o
彼女「私がどうしてそれを知ってるのか気になるの? 君、気付いてなかったんだ」

彼女「試写会の時、君の隣に座った金髪の子、覚えてる? ゴシックロリータの格好をした子」

彼女「あの子、私だったんだけど気付かなかった?」

彼女「お金さえ出せば、大体の物は手に入るんだよ。試写会のチケットぐらい簡単だったから。3万円出したら喜んで譲ってくれたよ」

彼女「君の隣の席のをね」

彼女「あの時は、メイクもかなり変えてたし、金髪のカツラもしてたし、服も普段と全然違ったからね。気付かなくても仕方ないかなとは思っていたけど」

彼女「でも、君の隣にいたんだよ」

彼女「あの女が君に寄りかかってるのも見てたから」

彼女「あの時は本当に気が狂いそうだったけど。アイツの両目をえぐりとって口の中に放り込んでやろうかと何度も思ったけど、でも、我慢したから」

彼女「我慢できて偉い? 褒めてくれる?」

彼女「褒めてくれるよね?」

彼女「君があの映画を楽しみにしてたから我慢したんだよ。そんな事したら試写会中止になると思ったから」

彼女「君に迷惑をかけないよう、今までずっとずーっと我慢してきたんだよ。私を褒めてくれるよね?」

彼女「褒めてくれるでしょ。どうなの?」
80 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:36:54.26 ID:HAAXENqko
彼女「そうだよね。君は褒めてくれると思ってた」

彼女「私がこれまでどれだけ我慢したか、わかってくれると思ったから」

彼女「でも、それも限度があるよね」



彼女「試写会に行ったり、ラーメンを一緒に食べに行ったりとかは、まだ我慢してたんだよ」

彼女「私はどっちも好きじゃなくて、あんまり付き合ってあげられなかったからね」

彼女「それは私の責任だから。私のせいだもの。だから、これはその罰だと思って受け入れたんだよ」

彼女「でも、安心してね。これからは全部、私が一緒に行ってあげるから」

彼女「ホラー映画とかでも平気だよ。あんなのもう全く怖くないから。笑顔で横にいてあげるよ」

彼女「ラーメンも平気だよ。味なんてどうでもいいから。どれだけマズいものでも平気。君が食べたいって言うなら蜘蛛とか百足とかでも平気で食べるよ」

彼女「これまでの我慢に比べたら、そっちの方が百倍マシだってわかったから。だから、どんな事でも付き合ってあげる」
81 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:37:38.48 ID:HAAXENqko
彼女「でもさ」

彼女「これで、私はもう罰は十分受けたと思うんだ」

彼女「これ以上は我慢の限界を越えてるの。もう無理」

彼女「今日みたいに抱きついてきたりとかさ、家に誘ったりとかさ」

彼女「許せる範囲を遥かに越えてるよね」

彼女「君だってそう思ってたでしょ?」

彼女「これまでずっと迷惑してたし、アイツに困ってたんだよね?」

彼女「そうだよね。でも、アイツに脅されてて、ハッキリとそうは言えなかったんだよね?」

彼女「うん。やっぱりね。わかってたよ」

彼女「本当にあの女はゴミクズだよね。人に迷惑しかかけないんだから」

彼女「害虫と同じだよ。駆除しておかないと駄目だよね」
82 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:38:34.54 ID:HAAXENqko
彼女「ん? ああ、そうそう。君が私に嘘をついていたように、私も君に嘘をついてた事が何個もあるの」

彼女「モールに行ったって話もそうだし、さっきの話もそう。君とあの女が一緒にいるとこ、お父さんが偶然見かけたって私言ったけど」

彼女「あれ、嘘なの」



彼女「最初からずっと知ってたから」



彼女「君のスーツの裏地にね、小さな盗聴器を仕込んでおいてあるから。あの時着ていったジーンズにも仕込んでおいてあったし」

彼女「だから、私、いつも真っ先にスーツを君から受け取ってるし、洗濯は私が必ずしてるでしょ?」

彼女「君に勝手に洗濯されたら困るからね」

彼女「だから、君の事で知らない事なんか一つもないから」

彼女「何もかも全部知ってるから」

彼女「君があのゴキブリの電話番号を男の名前で登録してる事も全部ね」
83 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:39:29.03 ID:HAAXENqko
彼女「わかった? わかったならスマホを出して」

彼女「今すぐ」

彼女「ゴチャゴチャ言わなくていいから、私の言うとおりにして」

彼女「早く」



彼女「あの女の電話番号を画面に出して」

彼女「それで今から電話をかけて。私の目の前で」

彼女「アイツが出たら、こう言って」

彼女「金輪際、二度と近付くなゴキブリ。とっと死ねウジ虫」

彼女「そう言って。君の口から、直接」

彼女「言って。一言一句、間違わずに」

彼女「出来るよね。出来ないとか言わないよね。やれるよね」

彼女「やり過ぎ? どこが?」

彼女「君、何であの女をかばうの?」

ガシャンッ!!!

彼女「それぐらい言えるでしょう? 言えるよね?」
84 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:40:49.76 ID:HAAXENqko
彼女「大体、君、あの女に騙されてるからね」

彼女「君が会社の女子社員全員から嫌われてるとか言ってたけど、あんなの嘘だから」

彼女「君がいる課の○○さんとか□□さんとか、君に好印象を持ってるよ。今時珍しい一途な男の人だねって」

彼女「私、あの人達とも友達だから」

彼女「前に、君の会社の前で待ち伏せして、頼んだ事があったの」

彼女「君があまり喋らないし愛想が悪いのは私のせいなんです、ごめんなさい、嫌いになるなら私を嫌いになって下さいって」

彼女「それからはずっと友達だよ。私、友達作るの得意だから」

彼女「むしろ、あの女の方が嫌われてるからね。よく仕事をサボって色んな男と電話やLINEしてるって」

彼女「人の男を盗るのが好きな女なんだって」

彼女「たまにいるよね。他人が持ってるもの、何でも欲しがる女って。そういうタイプらしいよ」

彼女「高校の時から何回もそれでトラブル起こしてるんだけど、全く懲りてないみたい」

彼女「そんなクズなんだけど、それでも君、あの女の事をかばうの?」

彼女「ゴキブリにはしっかり教えてあげないと駄目でしょ。自分が害虫だって事をわからせてやらないと」

彼女「だから、電話して」

彼女「さっき私が言ったセリフをそのまま言って」

彼女「二度と近付くなゴキブリ。とっとと死ねウジ虫って」

彼女「そう言って」

彼女「この期に及んで言えないとか、そんな事ないよね」

彼女「もし、まだ躊躇いがあるとか言うなら、あの女の舌を切り取ってここに持ってきてあげようか? 君に二度と話しかける事が出来ないようにしてあげるけど」
85 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:41:27.49 ID:HAAXENqko
彼女「うん。そう。かけて。今ここで」



prrrr prrrr



彼女「ずいぶん手が震えてるね。何が怖いの?」



prrrr prrrr



彼女「人間だと勘違いしてるアイツに自分がゴキブリだって教えてあげるだけでしょ? 何が怖いの?」



prrrr prrrr



彼女「そうだね。なかなか電話に出ないね」



prrrr prrrr



彼女「うん。もう切っていいよ。多分、アイツは電話に出ないと思ってたから」


プツッ……


 
86 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:43:42.89 ID:HAAXENqko
彼女「ほら、これ。このYahooニュース見て」

彼女「アパートの一室が燃えて全焼、ってニュース」

彼女「そこ、あの女の家なんだ」

彼女「多分、コンセントに埃が入り込んで出火したんじゃないかなあ。掃除はしっかりしないと駄目だよね」

彼女「でも、死人は一人も出てないって書いてあるでしょ。だからあの女も生きてるよ」

彼女「今日はアイツ、帰るの遅かったからね」

彼女「今頃、アパートにたどり着いてる頃なんじゃないかな。途方に暮れてるんじゃない? 何もかも全部燃えちゃったから」

彼女「だから、電話に出る余裕はないかも、って思ってたんだ。でも、出てたら面白かったよね」

彼女「家が無くなった直後に、君から死ねとかゴキブリとか言われるんだもんね。きっとショックだろうね」

彼女「言ってたら本当に死んでたかも。自殺とかして」

彼女「そうなったら楽しかったのにね。残念だね」



彼女「何?」

彼女「違うよ。何でそんな事訊くの? 私が火をつけたりすると思うの?」

彼女「そうだよね。なら、何でそんな事を聞いてくるの?」

彼女「うん、そうだよ。私は何もしてないよ。当たり前でしょ。アイツに天罰が当たっただけなんじゃないの?」
87 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:44:33.69 ID:16PnzEYOo
彼女「それよりも、君。忘れないでよね」

彼女「多分、あの女はしばらく会社に出てこないと思うけど」

彼女「出てきたら、会った時に必ず言ってね」

彼女「さっきのセリフ。覚えてるでしょ」

彼女「必ず、会った時に言うんだよ」

彼女「言ったかどうかなんて、私にはすぐにわかるんだから、嘘ついたって無駄だからね」

彼女「ついでに、会社も辞めろ出てけって言っておいて。必要ないでしょ、あんな女なんて」

彼女「自分の身の程をよく教え込んでおいてね。頼んだよ」
88 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:45:28.24 ID:EB9eT4b3o
彼女「ああ、そういえば火事で思い出したんだけど」

彼女「君の家の実家も、木造だから、燃えやすいよね」

彼女「この前、また遊びに行ったんだけど、その時にそう思ったんだ」

彼女「うん。君には内緒で、実はちょくちょくお邪魔してるんだよね」

彼女「お母さんなんか、私の事をかなり気に入ってるみたいで」

彼女「早く結婚して欲しい、とか」

彼女「孫が出来るの楽しみに待ってる、とか」

彼女「本当によく言われるんだ」

彼女「もし、君が私と結婚しないとか言い出したら、お母さん、きっとショックを受けるだろうね」

彼女「家に火をつけて焼身自殺しちゃうかもね。そうなったら悲しいよね」



彼女「うん。妹さんとも仲良しだよ。たまに勉強教えたりとかしてるし」

彼女「電車で高校に通ってるんだよね。でも、最寄りの駅とか朝凄く混雑するから大変なんだって」

彼女「誰かに押されて線路に落ちたりとかしないといいけどね。こっちも心配だよね」

彼女「事故には気をつけた方がいいよね。君もそう思うでしょ?」
89 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:47:02.59 ID:Vw0/H8Efo
彼女「それじゃあ、私の話はこれでお終い」

彼女「すっかり冷めちゃったね。ご飯、温め直さないとだね」

彼女「落ちたお皿も片付けないといけないし」

彼女「でも、その前に」



彼女「君への罰がまだ終わってないよね」


 
90 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:47:56.66 ID:LB3pn5wQo
彼女「そうだよ。罪を犯したら罰を受ける。それが当たり前でしょ」

彼女「君の罪は二つあるよね」

彼女「一つは、私との約束を破った事」

彼女「もう一つは、あのゴキブリをかばった事」

彼女「あの女と遊びに出かけたのは許してあげる。だって、君は脅されてたからね」

彼女「でも、私に全部打ち明けて相談してくれなかったのは駄目だよ。それは許せないから」

彼女「二つ、罰を受けないと」

彼女「そうでないと、また同じ事をしちゃうかもしれないからね。それは良くないよね」

彼女「だから、これは君がやり直しの機会を受ける為に必要な事なの」

彼女「わかってくれるよね?」
91 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:49:26.44 ID:LB3pn5wQo
彼女「大丈夫だよ。謝らなくていいから」

彼女「それに、二度と同じ事をしないのは当然だよね」

彼女「わかってる。許してあげるよ。君が罰を受けたら全部許してあげる。だから、安心して」



彼女「それで、君にはどんな罰がいいかなって色々考えたんだけど……」

彼女「最初は、指を折ろうかなって思ったんだ。一番簡単だから」

彼女「でも、それをやったら仕事に支障が出るでしょ。だからやめたの」

彼女「代わりに、爪を剥ぐ事にしたの」

彼女「それなら小さなペンチがあれば出来るし、仕事にもそんなに支障が出ないよね」

彼女「だから、もう用意もしておいたんだよ。百均で買ってきてあるから」

彼女「じゃあ、早速そこに手を置いて。タオルで巻いて腕を固定するから。痛さで動かないようにしておかないと危ないからね」

彼女「うん。罪一つで一枚だから、君は爪を二枚剥がさないといけないでしょ。だから」

彼女「どこの指がいい? 親指でも小指でも好きな指でいいよ。君が選んで」
92 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:50:39.10 ID:LB3pn5wQo
彼女「うん。そうだね」

彼女「痛いのは嫌だよね。わかるよ」

彼女「だからね」

彼女「君だけにそんな思いはさせないよ。安心して」


シュルシュル……


彼女「前に言ったもんね」

彼女「恋人ってさ」

彼女「楽しい事も辛い事も、二人で分け合うものだって」

彼女「そう約束したよね」

彼女「だから、先に分け合っておいたんだよ。ほら、見て」

彼女「私も自分で爪を二枚剥いだの」

彼女「私の小指と薬指、爪がないでしょ? 包帯してたのは実はそれが理由なの」

彼女「泣くほど痛かったけど、でも泣きながら頑張って剥いだんだよ。君の為に一生懸命我慢して二枚も爪を剥いだんだよ」

彼女「もちろん同じ事を君もしてくれるよね?」

彼女「私一人だけに、辛い思いをさせたりとかはしないよね?」



彼女「じゃあ、腕を出して。固定するから」
93 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:51:50.46 ID:LB3pn5wQo
彼女「大丈夫。本当に痛いのは最初の一枚目だけだから」

彼女「二枚目は一枚目よりも痛くないんだ。一枚目で感覚おかしくなってるから」



彼女「拳を握らないで。開けて」



彼女「まさか、やらないつもり?」

彼女「私にあれだけ辛い思いをさせて、私にだけ痛い思いまでさせるの? 君ってそんな人間じゃないよね」

彼女「私の事を愛してるなら、爪を何枚剥いだって平気だよね」

彼女「それとも何? 私の事を愛してないの? そんな訳ないよね?」

彼女「君は、私の事を愛してるもんね」

彼女「私の為ならどんな事でもしてくれるよね?」



彼女「許してじゃなくて」

彼女「そんな言葉聞かせないで。君の事、殺したくなっちゃうから」

彼女「君も、君の家族も全員。皆殺しにしたくなっちゃうから」



彼女「拳を開いて」

彼女「早く」


 
94 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:52:34.18 ID:LB3pn5wQo
彼女「うん。そうだよね。やっぱり君は私の事を愛してくれてるんだね」

彼女「安心した。良かったあ」

彼女「あ、でも、君の爪ってほとんど伸びてないね。私がよく爪切りしてるからかな」

彼女「これだと、爪楊枝を中に差し込んで、少し爪を剥がしておいてからじゃないと出来ないね」

彼女「ごめんね。今、爪楊枝を持ってくるから、少しだけそのままで待っててね」





彼女「逃げちゃ駄目だよ。わかってるよね」


 
95 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします [saga]:2024/04/21(日) 21:53:18.91 ID:LB3pn5wQo
彼女「じっとしててね。暴れると余計に痛いだけだから」





彼女「うん。そうだね。爪楊枝だけでも凄く痛いよね。でも、これからもっと痛くなるから、頑張って耐えてね」





彼女「はい。一枚目が終わったよ。もう一枚だからあとちょっと我慢してね。暴れないで。泣かないで」





彼女「はい。二枚目も終わり。どっちも綺麗に剥がれたよ」





彼女「ほら、見て。私も小指と薬指を剥いでるから、君とお揃いだね。嬉しいよね」





彼女「私達、何をするにしても、ずっと一緒だからね」





彼女「一生、一緒だよ。君の事、死ぬまでずっと大好きだからね」







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